ふわふわとした世界にいた。気が付いたら自分が今住んでいるところとは違う白いふかふかとしたベッドに寝ていることに気づいた。

……

 寝ぼけた頭のまま、桐子は起き上がる。ドアを開けて廊下に出る。ここは……潤先輩の部屋? そういえば昨日から潤先輩のお世話になっていた。

間取りは同じか。トイレ行って、洗面所借りて。

 顔を洗ってやっと目が覚めた。潤先輩と沙保里さんがいるだろうかとリビングの方に行ったのだがいなかった。

……寝よう

 やることなかった桐子は再び寝ることにした。

桐子……、桐子?

……詩音に潤先輩?

 詩音の声がして目が覚める。そしておなかが鳴った。まだ何か食べてないと気付く。潤先輩が沙保里さんに何か食べ物を持ってくるよう頼んだ。

桐子、ごめんね。心配かけちゃって

私こそ、ごめんね。その、ちーちゃんのことなんだけどね

とわたふたして言葉が続かない。潤から事前に聞いたそうなのだが、動揺して何も言えなくなる。

桐子、何も言わなくていい。その、先に私の話を聞いてほしいの

 詩音は桐子を落ち着かせようとぎゅっと抱きしめる。潤は空気を読んで退室した。

あのね、その……私、俊樹さんと付き合うことになったの。

詩音と、俊樹さんが!?

うん、桐子には真っ先に伝えなきゃならないと思って……でも大変なときにごめんね

 と詩音は上目づかいに桐子を見る。桐子はふんわりとほほ笑んだ。

よかった。やっと付き合うことになって

やっとって……

いつ、付き合うのかなって思っていたんだ。だって桐子と俊樹さんって互いにいい雰囲気だったから

いい雰囲気って……

詩音の俊樹さんに対する大好きと、俊樹さんの詩音に対する大好きでいっぱいだったんだよ。すごくお似合いで、ずっと待っていたんだから

 まだ殺人鬼と対話していないのに恋愛に向き合うのはどうだろうと思っていたが、桐子の反応は年相応だった。普段ぼーっとしている目がきらきらと輝いている。

桐子、ありがとう。

詩音が幸せになってくれてうれしいよ。その、結婚式には絶対参加するからね

けっ結婚ってまだ早いわよ。それよりも千夏のことなんだけど

 これからのことについて話した。殺人鬼との決着をどうやって済ませるのか、そしてちーちゃんを救う方法というのを考えようということになった。

 話し終えた詩音は退室して潤に声をかける。桐子の食事の用意を整えたところであり、桐子の食事のついでに少しお菓子をいただくことにした。

よかった。うまくいって。あとおめでとう

はい、ご迷惑おかけしました。潤先輩

 沙保里さんは桐子に大事な話があるということで寝室のほうにいる。潤は一呼吸おいてこういった。

私もきーちゃんに言わないとね。大事なことを

大事なことですか

そうだね。しーちゃんには先に言おうか

 潤は慎重に口を開いた。

私ときーちゃんはもうそろそろ婚約する

 婚約、将来を誓い合う仲になること。詩音は驚いたが、桐子の家の事情と潤先輩の家の事情を多少知っているためそうなるのだろうなと受け入れた。

桐子が大人の階段を上るとは

あまり家のことには巻き込みたくあなかったんだよね。でもきーちゃんと婚約を結べるのはうれしいかな

潤先輩自信もってくださいよ。桐子も喜ぶと思いますよ。桐子から内緒だよと言われたことなんですけどね

 詩音は桐子の心の内をそっと伝えた。眠れない夜に話をしたときのことだった。

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