魔導暦3056年…
マナの著しい減少によって、
イマジネーションガイアの魔法…
マジックは、衰退の一途を辿っていた。
魔導暦3056年…
マナの著しい減少によって、
イマジネーションガイアの魔法…
マジックは、衰退の一途を辿っていた。
世界のエネルギー基盤が
科学へ切り替わっていく一方で、
星の一族が治める『クロサイト王国』は、
代々受け継がれた魔石
『スタースフィア』の力を借り、
科学に頼らず栄えることに成功した。
しかし、科学エネルギーに移行して以来
著しい繁栄を見せた、
太陽の一族が治める『トロイメア帝国』は、
それをよく思わなかったーー
逃げなさい…アストル!!
三年後の魔導暦3059年…
クロサイト王国繁栄の鍵となっている
スタースフィアを狙い、
トロイメア帝国は戦争を仕掛けた…
いや、あれはそんなものでは無かった。
当時まだ六歳だった僕にもわかるほど、
二つの国の戦力差は歴然としていたのだ
母様!!イオ、放して!母様を置いていかないで!!
戦争は、当然トロイメア帝国の勝利に終わり、
スタースフィアは帝国に奪わた。
五つに分割されたそれは、
帝国の新たなエネルギー補助具
『マザースフィア』として
使われることになった…
敗戦の恨みをぶつけられることを
危惧した帝国は、
生き残っていた星の一族も
根絶やしにしようとした…
本当に、悍ましい虐殺だった…
生きなさい、アストライア!私の、可愛い子…
開戦から、虐殺に至るまで半年…
一年と持たずに、クロサイト王国は滅亡した
薔薇の天秤
~Rosy Libra~
アストルぅー!!おーきろー!!
るっさい!!
ぅおっ!?……っぶねぇ…おい!時計は投げるなっていつも言ってるだろ!?
お前がうるさいのが悪いんだろ!今何時だと思ってるんだ!!
もう昼の十二時だよ馬鹿野郎!店もとっくに開店してんだ、早く起きてこい!!
……ちっ…
………おはよ
アストル!ようやくお目覚めですね…ああ、まだ髪も梳かせてないではないですか…カストル!ブラシを持ってきてくれ!!
髪くらい自分で梳かさせろ!!つーかキッチン離れんな!オムレツ2種追加だ!!
しかし…!……オムレツ2種承りました!
イオ、髪はどうでもいい。モーニングティーを用意してくれ。今日はローズヒップの気分だ
アストル…申し訳ございません、少々お待ちを…あまりお客様を待たせると、店の信用が…
オムレツは僕が受けるから、お前は先にローズヒップティーだ。早く
しかし…
二度はないぞ
……承知いたしました…しばしお待ちを…
イオ!あんましアストルを甘やかすな!!
殿下のご命令は絶対だ…それに、殿下が注文を受けてくれるというのならば、尚更応えない手はない…!
おまえ…本当アストルバカだよな…
執事が主人に忠義を尽くして何が悪い
あー、すげー、尊敬するぜそういう所(棒)
カストル!オムレツ上がったぞ、持ってけ!
はぁ…あいよー!
はぁ…落ち着いたぁ…
……うん。香りも味も格別だ…また腕を上げたな、イオ
勿体なきお言葉…
そういや、兄貴おせえな…どこまで買い出し行ったんだ…?
少し前に、小麦粉がなかなか見つからないと連絡があった…もうじき豊饒祭だから、ほとんど菓子屋やパン屋に流れているのかもな
なるほどねぇ…でも、天気なんかやばくねえか?外真っ暗だぞ?
一雨くるかもな。水のマナが強い…迎えにいくか?
降ってきたら…その方がいいかもしれないですね。傘は持っていませんでしたから
あっ、じゃあそん時は俺行くわ。午前中頑張ったし、午後はアストルに丸投げ出来るし
させないぞ
お?やるか?
おやめ下さい殿下…ただでさえ狭い店内で、危ない事をされてしまってはたまりません…それに、そろそろ本題に入りませんか?
あー…そうだったな。今日はローズヒップ…次のターゲットが決まったんだな?
…ああ。できればポルックスもいる場で話したかったが、いないなら仕方が無い。夜にでも話を合わせよう
休憩時間は限られていますからね…さて、ライブラ…今回のターゲットは、やはり…?
ああ…僕たちの、真の目的を達成すべく…スタースフィア奪還作戦を始動する
やっとか~!待ちくたびれたぜ!!で、で!?最初はどれを狙うんだよ?
最初は近場から攻めていこうと思う…伯爵…アベンチュリン家が所持している、地のマザースフィア……『アイナリス』だ
いきなり伯爵ですか…ここは順当に、男爵から攻めた方がいいのではーー
たっだいまー!もーぅ、スコールなんて聞いてないわよ~!!
おかえり兄貴!ってうわ!?ずぶ濡れじゃねえか!!……タオル用意すっから待ってろ!!
ああ、ポルックス…丁度よかった。実は今、次のターゲットについてーー
(被せるように)お待ちください、アストル…ポルックス、その方は?
ん…?
ああ、そうこの子!!お店の前で雨宿りしてたのよ!でも、こんなびちょびちょな状態で外にいたら、風邪ひいちゃうでしょ?……あー…タイミング、最悪だったみたいだけど
お前というやつは…よりによって今…
……はぁ…別にいい。ポルックスにもちゃんと聞いてほしい話だったし…でも次はやめてくれ
ごめんね、アストルちゃん!…さぁて、アタシはホットミルクでも用意してきましょうか…ちょっとまっててね、すぐ妹がタオル持ってきてくれると思うから!
は…はい……
全く…ホットミルクより先に暖炉だろうに…すみませんね、お客様。すぐに薪をくべますので、少々お待ちを…
ありがと、ございます……
…………
…………
……はぁ…そんなところ突っ立ってないで、適当なところに座ったらどうだ?休憩中とはいえ、入口にずっと誰かが立ってるのは、印象が悪くなる
はい…えっと……
……ああもう…めんどくさい……
ここなら、暖炉も近くて暖かいはずだ。ここに座れ
はい……
それにしても…傘とか持ってなかったのか?お前……
ひっ…!
ひどい身なりしてるつもりだろうけど…上層階級だろう?
あ、ああ…ご、ごめんなさ…
アストル!
……何をする
それはこっちのセリフだ!そいつ、女の子だろ…何怖がらせるようなことしてんだよ!!
うるさい……そいつは上層階級…しかも、アベンチュリン家の人間だ…!
っ……!
は…?そいつが…?
何の騒ぎです?大声など出して…
なになに~?まぁた喧嘩してるの?
兄貴、イオ…それが…
ポルックス、どういうつもりだ?あろう事か、敵を入店させるなんて…
敵?…どういうこと?
チッ……よく見ろ!
きゃっ!?
殿下!!……!それは……
…森林の盾…!
ってことは、もしかして……
そう、森林の盾だ…知っているだろう、この紋が、アベンチュリン家の家紋だってことくらい…
ち、違うんです!!あ、いや、その…確かに、私はアベンチュリン家の人間ですが…!あなた達の敵なんかじゃないです!!
そうよ、アストルちゃん!何も事情を聞かずに…あのアベンチュリン家の子だってだけで、決めつけるのは良くないわ
五爵家は違わず僕らの敵だ…それがまだ分からないほど、お前は無能じゃないだろう?
アストルちゃん…
不快だ。開店時間までに出ていけ
殿下ーー
(遮るように)寝る!付いてくるな!!
…はぁ、参ったな
……ごめんなさい…今すぐ、出ていきます…
待って…大丈夫よ。少なくともまだ、開店まで一時間以上あるわ。それに、あんなこと言ってたけど、アストルちゃんも本気じゃないから…ね、イオちゃん?
ええ…申し訳ございません、お客様。彼は…ちょっと、昔色々ありまして
…………
なあ、良かったらなんが…どうして上層階級のアンタが、こんな辺鄙なところにいるのか…教えてくれねえか?
アタシ達、何か力になれるかもしれないわ…ねえ、話してみない?
お前達…アストルの許可もなく勝手なこと…
いいからイオちゃん…聞くだけよ、ね?
……はぁ…聞くだけだぞ
…私……家族を、殺されたんです…
殺された…?アベンチュリン家の?そんな大事件あったっけか?
アタシは聞いてないわね…
ええ、無理もないです…私の家は、アベンチュリン家の中でも、地位の一番低い家でしたから…一族に忘れ去られていたと言っても、過言ではありません…
……末家か…
…たまたま、私の代までアベンチュリンの姓が残っただけで、分家にも相手にされないような家柄でした…でも…半年前のことです…アベンチュリン家の、先代当主が亡くなりました
あったわねぇ、そんな事…
帝国民からの信頼も厚い人物だったそうですね…いい当主だったと聞いています
…いい人だったかは、私には分かりませんが…でも、民が言うのなら、そうだったのでしょう…
…ん?って事は、今のアベンチュリン当主は違う人がやってるってことか
カストル…あなた、もっと人事ニュース見なさい?今は、先代当主の長男が当主を務めているそうよ
ふーん…
ただ…あまりいい噂は聞かないな。先代当主が有能すぎたというのもあるのだろうが……ああ、申し訳ございません、お客様。あなたの血族を貶した訳では無いのです
……いえ、その通りです
…と言うと?
あの人は…悪魔です…!
悪魔……
あの人には、まだ奥方がいないのです…だから、跡継ぎが作れない…五爵家の当主は、同じ五爵の血を引く純血の当主を強く望みます
貴族の家系だと、良くあることですね…遠縁の相手と結婚し、その子どもを当主にするというのは…
今考えると…ちょっとありえねえよな…
貴族はそれだけ、血を重く考えているって事ね
……私は、その候補に挙げられました
マジか!?
きっと、改めて系図を洗い出したのね…あなた美人さんだし
そ、そんな事…!ない、です……
……見えてきましたね…あなたは、アベンチュリン伯爵に求婚されたのですね?
……はい
で、返事は…?
お断りしました。急にそんなこと言われたって、困りますし……怖かったんです…あの人の、私を見る目が…すごく、気持ち悪くて…
……最低だな
女の敵ね!
でも、あの人は諦めませんでした…ずっと、家臣に家の周りを張らせて、暇さえあれば私に会いに来て……体の関係を求められたこともありました…
まあ!!
うわ…
………
……一ヶ月前のことです…しびれを切らしたあの人が、遂にお金を積んできました…両親も、私も、断り続けました…そして、一週間前……
…実力行使に出た…と
…父も母も、最期まで屈しませんでした…私を守ってくれました…なのに…私、何も出来なくて…ただ、逃げて…!
可哀想に…辛かったわね…
私が何をしたっていうの…!何で…どうして、お父さんとお母さんが死ななきゃならなかったの…!こんなの、あんまりよ…!!
………イオちゃん、カストル…
……決まったな、イオ。アストル呼んでこい
ああ…はぁ…骨が折れそうだ…
あなた、アベンチュリン家が憎い?
そうでなくても、ちょっと痛い目にあってほしいって思うか?
……憎い、です…あの人は、まだ、私を探しています…あの人だけが、幸せになるために……そんなの、許せない…許したく、ない…!
なら、それで十分…アタシ達に任せてちょうだい
へ…?
どーんと構えていいぜ!俺たちに…怪盗団エトワールに、失敗の文字はない!
怪盗団…エトワール…!?
殿下、入りますよ
……帰った?
いえ…聞いていたのでしょう、全て…もう後には引けませんよ
……馬鹿なのかあいつは…正体勝手に明かすとか…僕たちは便利屋じゃないんだぞ…
ですが、そう思わせるような働きをして見せたのは私たちです…知っていますか、世間での私達…怪盗団エトワールの評判を…
…『正義の味方』だろう。帝国民は気楽でいいな
…殿下…
反対だ。ターゲットも変える
………
大体、あの話一つだけで、あいつを信用するのか…?あいつは帝国民だ…僕らの国を滅ぼした、帝国の民だぞ!?しかも、上層の…次のターゲットの…タイミングが良すぎるとは思わないか?
殿下…あなたが帝国民を信用出来ないのは知っています…ですが、それも捨てたものではないと…この数年で分かったはずでしょう?…彼女も、その帝国民の一人です
……………
アストライア王子…どうか…
…………はぁ…お前達は本当にお人好しすぎる…いつか身を滅ぼすぞ
殿下…!
あいつの為じゃないぞ!いつかは盗りに行く予定だったし、それに……あー!もう面倒臭い!!…すぐに作戦を立てるぞ!
はい!お待ちしておりますね!!
……帝国内部でも、潰し合いが始まっているのか…世も末だな
それじゃ、まずは改めて自己紹介からね!アタシはポルックス=トルマリン…コードネームは『ジェミオス』よ。よろしくね!
俺は、その妹のカストル=トルマリンだ。コードネームは『ジェミニ』!
私は、イオ=クリソプレーズ…コードネームは『オックス』だ。よろしく
………
……殿下
チッ……アストル=インカローズ…コードネーム『ライブラ』
ほ、本当に…エトワールなんですね…!
そんなに目をキラキラさせられると…ちょっと照れるわね!!
だって…!怪盗団エトワールといったら、悪徳貴族を懲らしめる正義の味方!抜群のチームワークで、どんな獲物も逃さない…素敵です…!!
毒されてんなぁ…一応犯罪者なんだぜ、俺たち…
今はそんな話に花を咲かせている場合じゃないだろう…やる気あるのか、お前
ひいっ!?ご、ごめんなさい…
もう、隙あらば噛み付くんだから…ほら、こっちにいらっしゃい!えーっと…
あっ…名前……私は、デメテル…デメテル=アベンチュリンです
デメテルちゃんね!よろしく!
豊穣の女神の名前か…いいじゃねえか!
えへへ…
(咳払い)
はわっ…ごめんなさい…
……殿下、計画の方は?
獲物は、アベンチュリン伯爵家が守護するマザースフィア『アイナリス』…これはさっき話したな?
ええ、カストルからあらかた聞いたわ
マザースフィア……って、あの、エネルギージェネレーターを動かしているっていう…核の…?
ああ、そうだ
そ、そんなことしたら、マナエネルギーの供給バランスが…!
文句があるなら今ここで消えろ
ひっ…!!
デメテル…済まないが、これは決定事項なんだ。ちゃんと理由もある…必ず話すから、今は信じてほしい
イオさん……
……で、配役はどうなってんだ?
そうだな…イオが現場指揮を執り、ポルックスが足を確保…
俺は陽動か?
……いや。今回カストルは、イオたちと待機していてほしい
はぁ!?
……成程、相手は伯爵家…警備は厳重なはず。戦闘要員を残しておきたいのですね?
ああ、そうだ。確率は限りなくゼロに近いが、万が一にも僕が手こずった時にお前を呼ぶ
そういう事な…分かった
んでも…それじゃあ、今回は陽動はナシなの?
いや?今までも陽動抜きで犯行をしたことはあったが…今回のターゲットは、今までのヤツとは訳が違う。陽動はしておくに越したことは無い
じゃあ、一体誰が…
お前がやれ
………へ?
ちょ…アストルちゃん、本気!?
殿下、幾ら何でもそれは…
その程度の覚悟もなく、『許せない』なんて抜かしていたのか?なら今すぐやめてしまえ。さっさと帝国から出て、どこか知らない村にでも身を隠すんだな
…………
…デメテル、よく考えろよ。この作戦に参加するってことは、お前もエトワールの手の者になるってことだ…犯罪者になるってことだ
あなたは依頼者でいいのよ…こんな危険なこと、嫌々しなくてもいいの
……どうするんだ?
………私……やります
ふん…決まりだな。今回限り、お前のコードネームは『ゴーヴァ』だ。その麗しい女神の名に見合った功績を残せ…いいな
はいっ…よ、よろしくお願いします…!!
デメテルちゃん……なにか心配なことがあったら、なんでも聞いてね。力になるわ!
無茶はすんなよ。それで失敗が一番悲惨だからな
それだけで瓦解するほど、エトワールは落ちぶれてはいないがな…そうでしょう、殿下?
当たり前だ…予告状は既に用意してある。今から出せば、明日の昼にはターゲットの許に届くだろう…決行日は明後日!それまで気を引き締めておけ!!
イエス、マイロード
イエス、マイロード
イエス、マイロード
は、ふぁいっ…!
はぁい、ライブラちゃん!守備はどう?
ばっちり。でも警備が一人もいない…どういうことだと思う?
大方、マザースフィアに警備を集めて袋叩きにしよう、という魂胆でしょうね…行けますか?
ああ、そういうこと…僕達も舐められたものだな
あーったく…頭沸いてんじゃねえの?怪盗ターゲットの部屋に入れたら、万事休すだろっての…
ライブラちゃんなら大丈夫だと思うけど…やばくなったら、いつでもジェミニを呼ぶのよ?
分かってる
こっ…こちらっ、ゴーヴァ!ポイントB、準備できました!!
ん…良くやった、ゴーヴァ。そのまま戻ってこい
は、はいっ…ゴーヴァ、戻りまっす!!
大丈夫なんだろうな?本当に、ちゃんと起動するのか?
問題ねえよ!兄貴が作った装置なんだ。動かねえはずがねえ!
そうよ!起動実験もクリア済み…あの子に死角はないわ
そっちじゃなくてーー
集中してください、ライブラ…もう間もなくですよ
わかった……
お、お待たせでしたぁぁぁ!!ゴーヴァ、もっ…戻りました!!
うっし…やれるじゃん
良くやったわ、ゴーヴァちゃん!さあ、あとは一発…どっかーんと、やっちゃって!
は、はいっ…!いきますよぉ……
ーー五秒前…四、三、二、一……
どっっっっかあぁぁあぁぁん!!!
(口笛)かぁんぺき!
ライブラ!!
分かってる…!!
ウィンディウム・マジック…ソニックウィング!
来たな…怪盗ライブラ!後衛部隊、放て!!
はっ!!
……チッ…邪魔だ!!
ウィンディウム・マジック…クロスウィンド!!
ぐああああ!!
……上流階級の豚が…
なっ…!!アイナリス部隊!!
はっ!!
図に乗るな!!
撃てぇぇぇぇ!!
舐めるな!!
フレイヤ・マジック…リビンフレイム!
うわああああ!!
二属性使い…!?そんな…まさか!!
伯爵!!ダメです!!敵いませんよこんなの!!撤退命令を!!
ならん!!ここだけは…マザースフィアだけは…盗ませるわけにはいかん!!盗ませてしまえば…アベンチュリン家は…私は…!!
……聞いていた通りのクズだな
なに…!?
………予告通り、マザースフィアは戴いていく。何も出来ないなら、今後地べたに這いつくばって生きていくことになる事を…嘆きながら見ているといい
させるか!!お前達!!なにをしている!!やつを引きずりおろせ!!逃げるなああああ!!!
悔い改めろ……
ルーメシア・マジック…クルーシファイ!!
あああ…やめろ!!やめーー
ジャッジメント!!
…すごい…
ライブラは、マジックの源…エレメントの力を宿した『エレメントリング』の力を借りて、どんなマジックも使うことが出来るんだ
そうなんですか…!ライブラさんは、すごいマジシャンなんですね…!!
制約はあるが…あれさえあれば、相手も対策のしようがねえからな!エトワールは今まで負け無しってことだ!!
うふふ、さて…ライブラちゃんの電池が切れないうちに、車を回しましょうか
ああ…あああああ…
地のマザースフィア…『アイナリス』…確かに頂戴した
私は…ああ…もうダメだ…おしまいだ…あああああ…
………
これから…どうすれば…ああ…私の地位は…遺産は…名声は…?ああ…
……いいことを教えてやろう、アベンチュリン伯爵
ああ…ああああ…
これからお前が行く道は、絶望しかない…希望は持たない方が身のためだ…なあ…伯爵サマ?
あああ…あああああああああ!!!
…………なんでお前がまだいるんだ?他のやつはどこへ行った?
アストルさん!!やっと目が覚めたんですね!!
質問の答えになってないぞ…
他の皆さんは、諸用があるとかで外出中です…私は店番を…あと…正式にエトワールのメンバーに誘われました。みなさんのお話も、聞かせてもらいました…
………
アストルさんたちは…10年前、帝国が滅ぼした『クロサイト王国』の生き残りなんですね…マザースフィアを盗むのも、元々自分たちのものだったから、それを取り戻すため…
……同情でもしたか
…それも、あります…でも、それ以上に…謝りたくて…
謝る?お前が?
10年前のことは…私、あまり覚えていないんです。大きな革新があったのは、覚えているのですが…あの時の私は、幼すぎました…今までも、何も知らずに過ごしてきました。あなた達、星の一族の犠牲の上に、帝国が成り立っていること…私は、何もわかってませんでした…
ああ…そうだな
でも…私はそれを知ることが出来ました。知らなければいけない事実を、教えてもらうことが出来ました…だから…
…………
…私が謝っても、どうにもならないことは分かっています。でも…それでも、その恩恵を受けている身として…一帝国民として、謝らせてください…本当に、申し訳ございませんでした…!!
…………お前になんの得がある?
え…?
僕らはお前達の敵だ…それに協力して、お前になんの得がある?同情や罪悪感だけで出せる答えじゃない…ここまで僕らに肩入れするなんて…それは、相当なお人好しのすることだ
………じゃあ…私は、お人好しなんです。相当な、お人好しです
………デメテル…だったか
はい…
………ヘマをしたらすぐに切り落とす。それまでせいぜい役に立ってみせろ
!…はいっ!よろしくお願いします、アストルさん!!
……酷い…
ステル、さま…っ……兄さん…!!
カストル…
…なんで…私達は、ただ…!!
…一番泣きたいのは、アストライア王子だよ…僕達が泣いちゃダメだ
でも…でもぉ…
……殿下…
……イオ、僕、決めたよ…でも、僕一人じゃ無理だ…手伝ってくれる…?
……殿下の命とあらば、私はなんだって致しますし、どこへでもお供いたしましょう…ポルックスも、カストルも、同じ気持ちのはずです
イオ…ありがとう…
トロイメア帝国……復讐してやる……いつか、必ず……!!