真由子さんに呼ばれて外に出る。
 目の前にいたのは私と同じくらいの年頃の子だった。

足立 環奈

あなたが野川詩音さんですか

 小柄な少女がいる。背の差はほんの少し、情報屋さんは私を少し見上げた。目と目が合う。
 その目は深海のような暗さだった。

野川 詩音

ええ

足立 環奈

あなたに依頼者から情報を伝えるように頼まれました。まずは、報告書を

 とA4の小冊子を渡された。連続殺人の真相と犯人とその関係について。
 小冊子の最後には安立環奈の名前が書かれていた。

野川 詩音

千夏が関係者で、ちょっと待って、最後のページの環奈ってあの

足立 環奈

ええ。あなたのご友人ですよ。まあ、彼女の正体は表に出るほどではないですから

 詩音が初めてしったこと、桐子が事前に聞いたこと。桐子はそれを知って吐いてしまった。抱えきれない重さを桐子は抱えていた。彼女を責められないと思った。これは、重すぎる。

野川 詩音

桐子は、全て知っているのですか

足立 環奈

ええ、あなたよりも知ってます。だから、あなたに相談しなかった。桐子嬢様はあなたを信じることができなかったのです

野川 詩音

……

足立 環奈

桐子嬢様は、体調を崩して胃の中身を吐いてしまうという失態を侵しましたが立派なことだと思います。あなたは思い込みで人を決めてしまう。あなた自身が嫌うことをあなたがよくやっている

 この少女は桐子の関係者なのだろうか。桐子の家のころを知っていて、嬢様と呼んでいる。最初から少女は私を快く思ってないように見えていたが、気のせいではなかった。

足立 環奈

本当は、あなたに真実を伝えるのは反対でした。あなたがこれを使いきれるかどうかあやふやでしたから

野川 詩音

私が、間違いを犯すとでも?

足立 環奈

ええ。あなたは桐子嬢様によく言っていたじゃないですか。犯人を殺してやりたいと。桐子嬢様も犯人を殺してやりたいという気持ちは持っていましたが、でも、その気持ちを抱えるのが難しかった。

 小柄な少女が間合いを詰める。威圧感が強く、コンクリートの壁と少女で息が詰まる。

足立 環奈

桐子嬢様が死体の写真を眺めたり、その知識について深めていったのは元々の生きる人間が怖いということに加えて、気持ちから逃げるためですよ。確かに、桐子嬢様は普通ではありません。あなたも同じです。

 ああ、確かに私たちは普通ではない。普通の高校生ではない。元々普通を知らない。普通を知っていたらそれなりに幸せだったものの、私たちは生まれてから普通じゃない環境にいたのだ。

 桐子と私は醜い世界にいた。桐子は笑顔を失い、私は心を失い。
 でも、この子が言うには、桐子と私は違うということだ。

足立 環奈

あんたは汚れているのですよ。染まっています。だから、私はあなたが嫌いだった。

野川 詩音

……

足立 環奈

これ以上、桐子嬢様を煩わせないでください。野川詩音さん

 小柄な少女はそう言って去る。小柄な少女は私とは初対面のはずなのに、まるで私を知っているかのように言ってきた。
 ありえないはずなのに、私は質問してしまった。

野川 詩音

環奈じゃないの?あなたは

 バカな話だったら、彼女はそのまま止まることはなかっただろう。
 でも、彼女は振り返った。

足立 環奈

……それが、何か?

 そして彼女は戻って来た。話をしましょうかと彼女は私の腕を引っ張ってカラオケ屋に入った。

真実を知る価値はある、けれどあなたに扱える価値はあるかしら?

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