その日の夜、もうそろそろ寝ようかなと思ったところに潤先輩からメッセージが来た。スマートフォンのロックを解除してアプリを起動させる。

 メッセージは潤先輩からだった。桐子が体調を崩して吐いたという。現在は潤先輩と潤先輩の姉と姉の友人が見ているという。私は心配になって電話をかけた。桐子と一緒に暮らしてからは体調が崩れるということはなかった。桐子の両親から大切な娘を預かっていると身としては心配だった。

野川 詩音

潤先輩、桐子は大丈夫ですか

ああ、ごめんね。夜分遅くに電話させちゃって。今は、落ち着いたところで眠っているよ

野川 詩音

そうですか

実はしーちゃんに話さなければならないことがある。その前に確認なんだけど

 とこれから大きなことが起こりそうな前触れを言って、潤先輩は続けた。

しーちゃんは、怒ると怪獣になるって本当なのかい?

野川 詩音

………はい?

 つまらない質問だった。頭に血がさーっとさざ波のような音を立てて上る。まさか潤先輩の口から桐子がよく言うような一言が出るとは思わなかったのだ。

野川 詩音

もしかして、桐子が言ったのですか?言ったのですね?言いやがったのか、あのバカは

あ、そのね。あまりにも怖がっていたから気になってね

 潤先輩が私の冷たくなった声に驚いたのか動揺している。私はそれに気づいてすぐに木を取り直した。

野川 詩音

すみません、潤先輩に当たることじゃなかったですね

いや、いいんだ。こっちも動揺して悪かった。きーちゃんが抱えていた秘密がおおきなものでね、体に負担がかかったみたい

 と一瞬潤先輩が誰かに話しかけられた。小声で、桐子が眠ったと伝えた。女の人の、高い声だ。

悪いね、少し眠くなってきちゃって。明日、そっちに情報屋さんを送るね

野川 詩音

あ、はい。わかりました。おやすみなさい

 遅い夜からいつもより遅い朝を迎えて、そして潤先輩の約束通りに情報屋さんが来た。

怒ると怪獣になるって、本当なのかな?

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