父は息子へ語ったことを思い出した。

昔々の世界は高度な文明があって

空飛んだり
 

海もぐったり、

変な怪物がいたりだ。

自分と
同じ蒼い眼を持つ息子を

その虚無ともとれる
無機質な部屋で

父は家族との写真を眺める。

ウィル……、 生きろ

 冷たさの感じない海の中のようだった。
 

腕に包んだはずの妹の感触がない。
 

やがてそれすらも意識から手放す。

 後悔の闇の中で光を探す。


海面へと向かう光を。

 少年はまどろみの中で
ただ漂っていた。

――……――

 暖かく優しい母の温もりのような
感覚に包まれていた。

 するとどこからか声が聞こえてきた。
 

――……――?

――……――?

歌のように口ずさみながら
近づいてくる声が

少年に話しかけてきているとは
思わなかった。

――……――?

 あまりに美しい女性の歌声、

いや、問いかけに意識を向ける。

 彼女はいくつか質問をしてきたようだった。

檻を、世界に抗う覚悟が
ありますか?

なんだ?

 

 なんのことだ?

少年はその意図をまったく読めない。

 ただその声には
震えと悲しさが伝わってきていた。

覚悟があるのならーーは
待っている。

呼んでいます。

私たちを解放して、

あの人と同じ瞳を持ったーー

―――………――

 彼女は満足したのか、

唄と共に徐々に遠ざかっていく。

 唄が何を示しているのか

この時の少年には分からなかった。

 そうこうしている内に

歌と夢はおぼろげになっていく。

ウィル

 まぶたにまぶしさを感じ、

ゆっくりとその蒼い瞳に
カーテンの隙間から
差し込むやわらかな光を受け入れる。

!!!


 光の角度によっては宝石のように
光を湛える蒼は一般的には珍しいとされていた。
 

その瞳を持つ16才の少年、
ウィル・Sゼレ・リベリはゆっくりと体を起こす。
 

久しぶりに
すっきりと起きられたと思ったが、


夢の内容は思い出せない。

……

 つまり
忘れるほどの夢だった
      ということだと

気にすることはやめた。

蒼眼の反逆者 〜ウィル〜

作者:そにお

二人の影に触れると、続きが読めます
(小説家になろうリンク)

以下、そにお様の書いた
紹介文です

 世界は前文明世界の
オーバーテクノロジーの発掘

およびその技術を運用することにより

歴史の浅い現文明世界が支えられていた。


 そんな世界に生きる少年ウィルは、

10年前に行方不明となった
父親が残した遺物が

ある座標を指していることに気づく。

どこかで燻っていたウィルは決意した。

絶対侵入不可侵領域とされている
海域への突入を。


 たどり着いたその先は遺物が遺物ではなく

現在形で活用されている
高度な世界だった。

勝手についてきた
妹が何故か嵐の中心となり、


父親探しはいつの間にか
大きな物語に巻き込まれていく。

その先で
蒼き眼を持っていることによって

災厄呼ばわりされ、

英雄呼ばわりされ、

ウィルの運命への反逆が

世界の理と彼女の願いが

始まる。

蒼眼の反逆者~ウィル~ 作者:そにお

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