さぁ、見えてきたよ。
旧アインスターク城だよ。

地平線はもう白んでいるな。
急がねば……。

んー？

おい、ソルフェ。
レヴスを中継しないで直接来たんだから
だいぶ時間の節約にはなってるだろ。

なんでそんなに慌てているんだ？

あ、いや……。

シーラの様子がどうにも心配でな。
不要にのんびりしたくはないのだ。

まあ、それもそうだな。

さて『信心の鏡』はどこにあるのか。

……。

おーい、ダイー！

ダイ！

あれ？

すぅ…すぅ……

寝てるのか……。
昨日よく眠れなかったのかな……。

もう少し寝かせてあげよう。

すぅ…すぅ……

……。

すぅ…すぅ……

……。

すぅ…すぅ……

……。

おーい、勇者様。

あ、どうも。
ラムディッシュさんにエレザさん。

随分と遅いので
ちょっと気になって……。

あー、ゴメンナサイ。
パーティーのダイがなかなか起きなくて。

すぅ…すぅ……

あら、この子、泉守のガラさんとこの……。

あ、そうです。

うぅぅ！！
お父さん！！
お父さん！！

！！！

酷くうなされてる……。

んー。
熱があるわけじゃなさそうだ。

やめろー！
ラムディッシュー！
お父さんを殺すなー！

え？俺！？

ちょっといいかい、勇者様。

こ……これは……

どうかしたんですか？

ダイさんの中から邪悪な物を感じます。

これは恐らく夢魔の類……。
早く追い払わないと……。

でも、どうやって……。

私が追い払ってみます。

主よ、
悪しき夢よりの使者を
退け給え。

やったか！？

やめろー……
……やめろー……
やめろー……

……ダメです……。
深いところまで入ってしまっているようです。

くそっ！どうしたら……。

残された方法は
……夢干渉しかありません。

夢干渉？

夢魔の作り出す夢の世界……
《夢魔の世界》は、
その側で寝る者や、
深層心理で深く繋がる人に
伝播します。

そこで、それを逆に利用して、
《夢魔の世界》へ入り込み、
夢魔を追い出すのです。

へー、なるほど。

それなら、
俺が《夢魔の世界》に入って
追い出します！

ですが……。

なにかまだあるんですか？

《夢魔の世界》において、夢魔は王。
夢魔に認識されるようなことがあっては
逆に支配されてしまいます。

その世界で夢魔を討つ為には、
認識されないことが必須なのです。

隠密行動、ということですね。

睡眠導入は私の方で行います。
準備ができましたら、言ってください。

勇者様、俺も行く。

え！？

どうして、アンタも？

一人じゃ見つかっちまったらおしまいだ。

だが、二人なら俺が夢魔の気を引いている間に勇者様がその後ろから夢魔を叩くこともできる。

それに……

それに？

チラッ

やめろ…
…やめろ……
ラムディッシュ…

どうやら、その"悪夢"に
俺も関係ありそうだしな。

……。

……わかったわ。
行ってきなさい。

でも、くれぐれも気をつけてね……。

ああ、オマエを置いて
一人で逝けねぇって！

よし！寝るぞ！

勇者様。
ゆめゆめ認識されてしまわぬよう
お気をつけください。