血の海。

 そんな言葉を思い出してしまう程、

オレの眼前は血と肉で色が付き、

むせるくらいの鉄錆の臭いが
辺り一面に広がっていた。

 オレが今まで見た事もない化け物達。


普通の動植物が
大きくなったような姿もあれば、

まるでそういう物語に
登場するような姿だったり、

見た事もないようなものまで種類は様々。

でも、状態は同じ。

皆死んでいた。


 遺骸が何十、

もしかしたら何百とあって、

オレを中心に山を作り、
血は小さな湧き水のように溢れている。

 当然だ。

だってこれは
オレが作ったから。

 人間の血の川を、
人間の死体の山を作らない為に

オレが作ったから。

その証拠にオレの体には

魔獣の血と肉片で紅く染まっていた。


 夜になって、魔獣達が村を襲ったから。


 村を守る為に、殺した。


きっとこの魔獣達だって

自分達に恨みがあった訳では
なかったのかもしれない。

 村長の話では、

今の山は
魔獣どころか普通の野生動物も
食べ物に困ってしまう程

実りが少なく、気が立っていた。

目の前で死んでいるこいつらだって、
食うのに困っていて、



否応なしな状況になっていたのかもしれない。

生き残るための虐殺。


 
 魔獣達の足では
山を越える事は難しかったのだろうし、

一番手近で
簡単に餌を得られる場所を求めたなら

……結局ここになるだろう。

 でも、オレには
それが許せなかった。


 例え魔獣に罪がなかったとしても、

生き残る上で仕方がなかったとしても。

……

 唐突に現れたごく潰しに

貧しいながらも世話してくれて、

家族のように接してくれて、

優しさをくれた人達を、

犠牲にする事は出来なかった。



 例えそれが
魔獣達には必要な事だったとしても、

人間はそれを許容出来ない。

 だから剣を取った。

《勇者》ト《眷属》ノ物語

作者:鎌滝ノ介様

剣に触れて、続きを読む
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以下、鎌滝ノ介様の紹介文です

――これは、一人の優しき《勇者》と、
空っぽな《眷属》の物語である。

《勇者》が《魔王》を倒し、
世界が平和になって1000年。

世界の国の三分の二は《世権会議》という
人類種同盟により、

微妙なバランスによる平和を保っていた。

その中で、第三者的に
その内部の調和を護る《勇者》。

その《勇者》の剣であり、盾である《眷属》。

そんな世界に己が記憶を失い、
体も幼くなりやってきた「トウヤ」


《勇者》になろうと奮闘する「サシャ」

二人の行動は、
この世界にどのような運命を与えるのか――。

「全部、救う――」

「――全部、護る」

《勇者》ト《眷属》ノ物語 作者:鎌滝ノ介

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