──苦節、13年である。
オラァ!
働け新入りィ!
は、はいぃッ!
──苦節、13年である。
13年もの間、オレは耐え続けた
全ては“野望”を叶えるために、
家族も村もほっぽり出して
大海原に駆け出して
……開幕2日で
賊に捕まり、
身ぐるみ剥がされオレは奴隷。
可愛い顔だな
変態貴族に売ってやるぜ
とゲス顔浮かべる
ヒゲ面ヅラ野郎に、
それは困る
と泣きついて、
なんやかんやで雑用係にオレ就任。
……そして始まる海賊生活。
それはまさしく地獄の日々だった。
早朝起きてはオッサン共の
メシを作り、
日が出るころには
オッサン共の
ナマ臭っせえシーツや
パンツを洗って乾かし、
昼になったらあちらこちらで
オッサン共にコキ使われたり
船を襲って血に塗まみれたり、
そして夜になったら
何かにつけて宴会を開こうとする
オッサン共に酌してやったり。
そんなこんなで深夜になって
ようやく休めるも、
ま
た
朝
早
く
に
は
オ
ッ
サ
ン
共
の
世
話
を
・
・
・
。
と、見事に
オッサンまみれである。
思い出したらゲロ吐きそう。
──しかし、奴らに従う生活は
今日で終わりである。
そう、終わりなんだよ……
お前らオッサンはなぁ!
──クーッハッハッハッ!
引っかかったなバァァァカッ!!!
ああ、なんて清々しい気分だろうかと。
長年望んだ結末に、
カノンは笑いが止まらなかった。
夜風にはためく帆の下には、
まさしく地獄が広がっていた。
身の内側から起こる大激痛に絶叫し、
悶え苦しむ海賊ども。
──そう。簡単な話、
盛った・・・のだ。
仕事の成功を祝って
宴会を楽しもうとする彼らの食事に、
ほんのひと手間
“隠し味”
以下、
ユーチューバー・イレーナ様の
紹介文
「──誇り高き亜人種たちよ!
オレと共に立ち上がってくれッ!」
その存在は、
あらゆる者よりあらゆる呼び名で、
畏敬の想いを向けられる。
曰く彼こそ“光の英雄”。
曰く彼こそ“反逆の魔王”。
曰く彼 女こそ、
“白百合の姫”と呼ぶ者も。
しかしてその真実と言えば、
実はそのどれもが正解であり─
─また総てが、絶望的に間違っていた。
そう、彼の正体は──