もうすぐ消えゆく国の人々達は
悲しげに、優しく、したたかに微笑む。

それを見る黒の双眸は、
静かな憤りに塗れる

それなのに、何故
    永遠を選ばなかった

青年には、
消えゆく人の考えが理解出来なかった

彼らに手を伸ばしても、
 その傍から光と砂になっていく。


手を伸ばしたら、崩れていくそれは
まるで自分自身が壊しているみたいではないか。

廃国の民は、砂へと還る。

その砂はコンクリートへ落ちていき、

 或いは霧の様に、
        硝煙へ溶けていく。

黒き青年は
壊され、廃墟に染まっていく国を
  眉を潜めて眺めるしか出来ない。

彼らは黒船を
 選ばなかったから。

黒船が行う電子化を
 受け入れようとしないのだから、

消えゆく廃国の人々は、

禁忌たる延命なんて望んでいない

と、
誇り高く言うものだから、

……っ、
救えない事に、憤りを感じる

零れた言葉に、青年は自嘲した。

一方、白衣の少年は
落ちる砂を一瞥し、
 哀悼の微笑みを浮かべる。

しかし、その表情を
    嘲笑で貼り付けて嗤う。

救う? エゴは止せ。
コイツらは最期を選んだ。

黒船は、その意思さえ壊すのかよ

冴えた太陽の様に乾いた笑みで、
青年を見下ろす少年。

しかし、左手に隠された右手は、
廃国の英雄だった遺砂を握り締めている。

望むものがあるならば、
死さえ壊す覚悟を何故持たない

勝った国に
不死の身体だから、と蹂躙される

そんな最期が延々と続くのなら、
生殺しじゃねェか

白い青年の握る手を強く握りしめる。
震える。

掴んでいた遺砂が虚しくも、

風に攫われ、
さらさらと地面に降り注がれる。

その砂が落ちていく様に魅入ってしまう。

彼らが決めた終わりだ。

その死に様を、
愛する気概でなくてはならないのに

ふと哀しんだ自身に笑った。

どれだけ無様でも生きていれば、
いつかと

無様なのに生きる意味が
何処にあんだよ

売り言葉に買い言葉を交わしながらも、
その会話に、意味など求めていない。

落ちる国の最期を看取る為、
彼らは、もうすぐ消える国にいる。

温かさと、虚しさ、愚かさ、
色々な感情が混ざった表情を
浮かべながら、或いは、隠しながら、

国の最期を看取っていた。

始まりは看取るだけの話

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