自分のことについて語るのは疲れる。話し終えて机に突っ伏した。ため息を大きく吐いて、目を閉じる。

野川 詩音

はあ、疲れた

 生きるのが嫌になるくらいに疲れる。話せば話すほど、自分が普通じゃないというのを実感する。元々、自分は普通じゃないっていうのを知っているけれど、嫌な気分であるのには変わりない。

野川 詩音

先輩、私は普通じゃないでしょう。それは知っていることでしょ?

 先輩はうなずく。颯太先輩が聞き上手なおかげで心の中で渦巻いているものを吐き出すことができた。ずっと抱えていたものを手放すことができるからだ。この一瞬だけでもありがたい。

野川 詩音

私と桐子が人間らしく生きていけたのって、瑞希のおかげだった。瑞希と会うまでは一人で生きていこうと思っていましたから。あんなに嫌な思いをしながら生きるなら、一人で生きる方がましだと思っていたところを希に救われました。

 瑞希や桐子に会う前の私は何をしていたかというと、あの人たちの前ではあの人の理想像を演じていて、母の味方の人の前では母の遺志を受け継ぐ娘だった。何かしら忙しかったと思う。周りの子たちと一緒にいるのが煩わしく感じて学校を休みがちだった。
 自分はあの子たちと一緒じゃなくて、何かしら孤独を感じていた。

詩音、一緒に遊ぼうぜ

 中学生になってからできた友達の瑞希は太陽のようだった。なぜか懐かれてしまって、一人でいようとする私にぐいぐいと迫ってくる。気が付いたら友達になっていたという関係だ。

詩音が好きだよ。どんな詩音も好きだ

 どうしてこんなに私に構うのかと質問したことがある。理由はわからないけれど、考える以前に好きだという。

人間ってそんなもんだよ

 瑞希に事情を話す。自分の複雑な事情。瑞希は静かに聞いてくれながら、私を抱きしめてくれた。
 何も言わずに静かに優しく。

理由見つけたよ。詩音を好きな理由。

 それは告白大会をしようとする前のこと。瑞希が見つけた理由は……。

 走馬燈のように瑞希との思い出が駆け巡る。瑞希のおかげで生きようと思った。桐子にも出会って、私は一人じゃないと思うようになった。でも、恩人の瑞希はもういない。

野川 詩音

私が生きていけるのは、瑞希のおかげだった。でも、瑞希はいない。私と桐子は実は危ない状態なんですよね

 今は大丈夫かもしれない。けれど、これからはどうなるのだろう。今、私が生きている理由は殺人鬼を探すという任務があるからだ。けれど、物事が解決したら、私はどうなるのだろう。

野川 詩音

私はあの人たちの考えを否定できないし、母の考えを否定できなかった。だから、本当の自分がよくわからなくて演技するしかなかったのです。なんというのか、呼吸できないというか

 息苦しさを感じる。水の中にずっといるような、酸素が足りないような中にいる。

野川 詩音

颯太先輩、俊樹さんが私を好きという話ですけれど。

 最初に戻る。今の私にとって確認するべき事項。私と俊樹さんの関係についてだ。私と俊樹さんはどうあるべきがいいのだろうかと考える。

野川 詩音

私も好きですよ。俊樹さんが好き

 嫌いな点なんてない。私にとって理想の男性で、優しくて難しい話を聞いてくれて。

野川 詩音

でも、このことは言うつもりありません。私、いつか早く死にそうだから

 自分の未来が一つ見える気がする。ふっと消えていくのだろう。醜い心を抱えて生きるなら、死ぬ方がましだ。

いつか崩壊しそうな私は生きていてもいいですか

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