家族とは何なんだろうという颯太先輩。悩みがなさそうだと思っていたけれど以外だった。小学生の頃の出来事が自分を変えるものだったから、今でも引きずっているのだ。これからも心の残っていくのだろうか。

 颯太先輩の家族の話を聞いて羨ましいと思った。自分の家族にはないものを持っているからだ。大抵、私が聞く家族の話はどれも理想の姿ばかり。でも、それに対して嫉妬をするつもりはない。ないものばかりをねだって生きていくのは癪ではないからだ。

野川 詩音

何も知らなかったら幸せだったのです。何も知らなかったらよかった話だったのですよ。

 嫌なこともうれしい事も突然訪れる。ある日突然両親が離婚したのだ。詳しい事はその時聞かされなかったが、後から母本人が教えてくれたのだが、教育についての差異によるものだった。

野川 詩音

離婚してから3ヶ月後でした。突然再婚したのですよ。何も説明なしだったのです。

 1回目の再婚だった。母がいなくなってから祖父母と暮らすようになったのだが、質問しても答えてくれなかった。どうして母親はいなくなったのか、どうしてこうなったのか。
 ごめんねと言うばかりで苛立っていた。

 突然現れた母親。よくわからない中で現れた母親にすぐに懐くわけにはいかなかった。全然知らない人が家族になるなんてよくわからなかった。
 でも、ギスギスするのは嫌いだったので表面上は仲良くしようと努力した。

野川 詩音

話してみたら悪い人でもなさそうだなっていうことが分かったので、仲良くするようにしました。

 ある程度仲良くなった後、私は母親がいるところに連れられた。母親は私に会うことを禁止されていたのだ。会おうとすると警察に通報するなどいろいろと脅してきたらしい。
 新しい母親は母に依頼された探偵さんだという。

野川 詩音

嫌がらせといいますか、あの変ないびつな家族もどきに復讐しようという話になりました。

 私がいた家は狂っていた。ある意味狂っていた。外から見えない狂気があった。
 あの場に母と新しい母役とそして、母の後輩だという現在の母、真由子さんと私の父親の妹、叔母がいた。

はじめまして。私はあなたの叔母よ。勘当されちゃったけどね

 叔母はあの家族の被害者だった。女の子らしく、理想の姿になれなかったからという理由だという。
 叔母は活発で元気な人であり、昔から剣道とか武道を嗜んでいた。家族には苦い顔をされながらも、護身用のためというと許可してくれた。

詩音ちゃん、あなたは自分の意見を言ったことあるかしら?

意見?考え?

ええ、何かしたいとか食べたいとかそういうもの

 と言われて考えてみる。普段から何もかも与えられ続けていた私は意見をあまり言ったことがない。
 あ、でもよく言っていたことがあった。母に会いたいとよく言っていたわと私は答える。

あの人たちは何て言っていた?

遠いところにいっちゃったとか、お星さまになったとか。
あと、なぜか写真が仏壇に飾られていたの。
お葬式やってないのに、なんでそんなことをしたのだろうって疑問に思ったけれど、なんか怖くて聞けなかったの

 それを聞いて叔母と真由子さんがすぐに怒った。あの野郎、勝手に殺すとはと表情が変わる。探偵さんのおかげで場は収まったのだが、怒りの空気は収まらなかった。

詩音ちゃん、私たちはあなたの味方だからね。遠いながらも、あなたを守るから

 長い話し合いの後、真由子さんたちに抱きしめられる。とんでもないことに巻き込まれてしまったという不安と嫌な事をしってしまった後悔と仲間ができた喜びがぐるぐると回りだす。

野川 詩音

それから、私たちは会うようになりました。けれど、ばれちゃったんですよ。

野川 詩音

あの人に、父親に

 なぜ露見されたのか、わからない。父も探偵を雇っていたらしい。母は父から思いっきりなじられて、なじられて……。暴言吐かれて、心粉々にされて。

野川 詩音

母は、死にました

 母は天涯孤独だった。父はうまいこと、母を壊す材料を持っていたのだ。
 あの日の首吊り死体を忘れられない。
 今も思い出す。
 ゆられている母親、白くなった母親。
 最後に骨になった母親。

野川 詩音

私の家族は、パズルみたいにできていたのですよ。条件さえ、セリフさえ間違えなければいいというものだったのです。

 完璧に狂っていて、完全に壊れていた。

それは仮面をかぶった息苦しいもので

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