兄貴たちが帰るまでの間、俺たちは互いのことを話し合う。趣味とか今までのこととか。そしていつの間にか家族の話になった。

野川 詩音

仲いいのですね

 家のことになると羨ましそうな、少し切なそうな顔をした野川。悠月が作ったレポートによると野川には家族仲が悪いという情報がある。俺は話題を変えようとしたのだが、野川が話を聞かせてほしいと頼んできたので話を続けることにした。

後で土産をもらおうかな。このお菓子

 きっかけは些細なつぶやきだった。俺はいつもの癖が出てしまう。街でぶらっと出かけて美味しそうなものを見つけると下の兄弟たち、そして両親に食べさせたいなあと思うのだ。自分だけで独占するのはもったいないと思ってしまう。

野川 詩音

お土産ですか。そうですね。実は、クッキーもあったりするのですよ。真由子さんっていつも大量に作りますから

 と詩音は台所の方に移動した。皿いっぱいに盛ったクッキーが出てきた。

おお、これでうちのチビたちも大喜びだ。

 俺と俊樹兄を合わせて7人家族。必要な分だけ頂く。野川も小邑に持って帰る分を取って、やっと皿が空いた。

野川 詩音

颯太先輩のとこって、大家族なんですか?

ああ。いつも家に帰ったら遊ばなきゃならないから大変でね

 と話初めてふと止める。野川の家庭事情が複雑だということを思い出す。けれど、野川は続きを待っていた。いつのまにか一人一人の個性について語っていったのだった。

家族って何なんだろうな

野川 詩音

先輩?

悪いな。なんか自慢みたいになってしまって、しかも俺ばっかり話していたから

野川 詩音

あ、いいのですよ。私、すごく好きでしたから

そっか。よかった。昔、家族の話をしたら自分とは正反対のことを言った子がいたからな。誰もが家族の話を必ずしも好きというわけではないことを思い出したんだ。

 俺が小学生の頃だ。今みたいに何かと家族の話をしていた。新学期でクラスメイトの入れ替えがあって、初めてできた新しい友人たちといろいろと話をしていたのだ。その内の一人が、自分たちとは違う価値観を持っていた。

家族なんていいことなんてないよ

家族だから、なんでもかんでも許されるものなんだよ

泣かせて偉そうなことばっかり言う、それも家族なんだよ

 あいつはそういうことを言っていた。俺たちはそれを聞いてなんとも言えなくなってしまった。
 しばらくしてからあいつが学校に来なくなった。

 ある日、担任の先生からあいつが転校したことを知る。あいつの母親があいつの父親の母親、姑に長い事いじめられていたらしい。あいつの父親はあいつの母親をかばうことなく、仲良くできない母親が悪いと言っていたという。
 母親は自分さえ我慢すればと思っていたのだが、あいつがどんどんとおかしくなって、しまいにはあいつの父親と姑を包丁で刺そうとしたところでこのままではだめだと覚醒したそうな。

家族っていいことも悪い事もあるってことを初めて知ってから、考えるようになったんだ。家族って何なんだろうって

 こういう悩みを始めて話す。潤たちにも話さなかった。野川にはこういう話をしたのは聞いてほしかったというのもあるし、答えを知りたいと思ったからでもある。みんな何かしら悩みを抱えているけれど、俺の悩みは哲学的というか深く考えなければならないものであり、難しいものなのであまり人にはするべきではないと思っている。

野川 詩音

家族という定義ですか……。先輩は自分とは違う家族の話を聞いてそう思った

ああ

野川 詩音

私が思う、家族の話をしましょうか。私も普通の家族じゃないから、答えというのは見つからないかもしれませんが

 野川の答え、考えを聞く。
 狭い世界で野川はとのように考えを抱いて、価値観を持つようになったのか。その起源を聞いた。

定義の違いについて考える

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