颯太先輩と二人きりで話をするのは初めてだった。いつも颯太先輩の傍には秀俊先輩がいたので、一人の颯太先輩を見るのも初めてだと思う。

兄貴だよ。俊樹兄がうちの一番上の長男だ

野川 詩音

そうだったのですか

 颯太先輩のおかげで、真由子さんが作ったたくさんの料理の4分の一が消化された。俊樹さんの分を残すようにしながら、種類ごとに口につけていた。

で、兄貴に告白されたの?

野川 詩音

告白?

その様子だと、まだみたいだな。あのヘタレ兄貴

野川 詩音

え、ちょっとどういうことですか?

 意味深長にため息を吐く颯太先輩。私はその内容が気になって詰め寄った。告白とか、ヘタレとかどういうこと?

ずっと兄貴から、相談されていたんだよ。野川のことについて

野川 詩音

そ、相談?

恋だよ、恋

野川 詩音

こ……恋ですって!?

 とんでもない秘密を聞いてしまった。俊樹さんがいないからこそ聞けた秘密。颯太先輩はやっと吐き出せたと顔がすっきりしていた。

 一方、その頃。
 俊樹と真由子は買い物を終えて一休みしているところであった。ちょっとした展望台から街並みを眺めている。

義理の親子ですか

ええ、色々あってね。恵梨香さんが結んでくれた縁というもののおかげでね

 俊樹は内心バクバクとしていた。実は真由子にも恋の相談をしていたのだ。弟には気軽に、そして真由子さんには年上であり、尊敬の思いで相談したのだ。

ねえ、俊樹くん。

な、なんですか?

 ふんわりとした空気がピリッと張りつめたものに変わる。俊樹は少し後ずさる。その距離を開けないようにずいっと真由子が詰めた。

もしかして、あなたの恋の相手って、詩音のことでしょう?

な、なに言っているのですか。大の大人が高校生に恋をするわけないでしょう

高校生、高校生ねえ。あなた、高校生に恋をしているなんて初めて聞いたわよ

 口の端を上げて、勝ったと言わんばかりに真由子は俊樹を見る。俊樹はしまったと口を抑えた。

反対というわけではないのよ。ただ、あなたたちはわかりやすいと思っただけなのよ

そ、そんなに顔に出ていましたか

 俊樹は少し困ったように笑う。隠していたつもりなのだが、わかりやすいのだろう。実際、同僚にも考えていることが顔に出やすいと言われるため、気を付けているのだが……。

詩音もね、普段は感情を隠しているけれどあなたに対しては好きっていうオーラを出しているからね。似た者同士ね

え、そうなのですか?

ええ、あの子はあの子でいろいろとあったから

 真由子は俊樹に話をすると決めていた。詩音についてだ。あの家から離れた今でも、やはり悪い影響はすぐには消えそうもない。できれば、詩音の理解者が隣にいることを願っている。

俊樹くん、あなたはどんな詩音でも受け入れてくれるかしら?

 否定されたあの子。
 願いを押し付けられたあの子。
 あの子の気持ちはどこにもなかった。

初めて知ること 秘密の会話

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