あれ?コトチンとサオリンは?

あ~・・たぶん声優科の教室でボーカルトレーニングやるって。

あれ?そうなの・・・しかしアイドルの部活かゲームの部活かわからなくなってきたね・・。

でもまあ・・ステージで歌えといわれるとアレなので、にぎやかし要因として私たちが適当にお茶を濁すためには声優科の方には頑張っていただかないと。

机に肘をついて友紀はスマホをいじりながらそういった。

でももうすぐ夏休みよね・・まさかレッスンで夏休みは学校に出てこい!なんて言われるんじゃ・・・それはなんとか避けたいというか。

確かにあまり歌わずに踊るだけでもダンスの練習は必要になりますもんね。簡単なものでも踊れるかどうか・・・

麻衣子と華菜里が不安を漏らす。

じゃあ夏休みの予定を先につくちゃおうっか!合宿とか!!

お~・・・やってみたかったですよ。そういうの。

でも・・お約束の別荘とかないですよね?コミケとか?

いや・・それは合宿といわないというか、別に東京まで行って同人誌買いたいとか思わないよ。

別荘・・・それはハードルが高いですね。この中にお金持ちのお嬢様とか居ませんか?

友紀が聞いてみる。期待はしてなかったが。

・・・・・。

まあ無理か。ですよね~・・・。

あの・・別荘というわけではないのですが・・・。


少しの沈黙の後、言い出しにくそうに友紀が声を出す。

ん?

死んだおばあちゃんの家に毎年夏に出かけて空き家を掃除するんです。
そこなら合宿っぽいこともできるかもですよ。
もっとも掃除しに行くわけですし、ボロいので快適とはいかないのですが。

お~!!!実質別荘!!!

なんですか。その実質って。でも・・・ネット環境ないんですよね。そこ。スマホの電波ぐらいは届きますけど、ギガ結構使っちゃいますし。

いいんじゃない?田舎でネットから離れてってのも・・一週間とか言われるときつい感じだけどさ。

そうね。人が少ないならボーカル練習とか、サバゲとかできそうだし。まあ一応警察とかに連絡したりとかちょっとめんどくさいか~・・・

うわ!先生!!いつのまに!!!

だらっとした姿勢で話していたのでコンピュータのディスプレイの陰に隠れて先生が来ていたことに気が付かなかった。
その声の方向をみるともう一人。変わった制服の子が居た。

あれ?知らない・・・まあいいわ。自己紹介しなさい。

はい。CS科左山歩夢。
感じでさはひだりのさ。あゆむはあるくという時にゆめですわ。
お姉さま方・・。

おね・・・

あんた同級生でしょ!なんでそんな話し方になってんのよ・・・昨日まで一人称は俺だったでしょ。

隣にいた富永先生が突っ込む。後半は聞こえないようなひそひそ声で。

ええ。昨日さっそくdアニメでマリア様がみてるを出来るだけ見て予習しましたわ。みなさんとも面識はないですのでちょうどよくはなくて?

一応確認しておくけど、その話し方つらくはないの?

かまいませんわ。部活の時間の間ぐらいならば・・・。

それならいいけど。

コンピューターの動作音などで同じ部屋でも小さな声は聞こえないが、そのやりとりを見て部員たちはきょとんとしていた。

えっと・・新入部員なの?その子。

ええ。そうなるわね。アイドルの話を聞きつけて入部したいって。
ゲームの腕も話を聞く限りそこそこありそうだし。そうよね?

はい。ここに来る前はゲーム研究部でオーバーウォッチを主にプレイしていましたわ。
文化祭までに同人誌を作ることになってましたのでそのあたりのプレイ動画やニュースなどはチェックしていました。その過程でeSportsにも興味を持った・・・。
ただアイドルになりたいだけではないですのでそのあたりは誤解なく・・。

へ~そうなんだ。部員が少なくて困ってたし、アイドル希望でもいいよ。というか私あんまり出たくないから代わって!代わって!


ピクンとその言葉に反応しつつも、苦笑いを浮かべてどう返事をするのか迷ってるように見えた。
(駄目ね・・・もう”女装”がはがれ落ちそうになってる・・。)
はあ・・とため息をついて先生が話を始める。

そういやさっきの合宿の話。やるなら私もついてついてくから。まあボーカルとかステージの振り付けの練習とかやるならちょうどいいだろうしね。みっちり練習するわよ!朝から晩まで!!!

(!!!!!)
朝から晩までこれを続けるのは無理だ・・・つまりは先生は今すぐその話し方をやめろといいたいようだ。
だがどうやって・・・その時、声優科の2人が部室に戻ってきた。

遅くなった~。早速ゲームしよっか!・・ん?

彼女たちを見た瞬間。歩夢はとりあえず想定していた”ネタ”を披露してやろうと思った。
外したならそれでもいい。最初の自己紹介も”ネタ”だったと言い訳できる。これだ。

君たちが噂のスールかい?

スール?何・・・?

琴絵はなにかわからない言葉を知らない子から投げかけられて戸惑っていた。
だが沙織にとってはその言葉の意味がわかった。
そしてその特別な容姿と制服・・・。

お姉さま・・・私。

沙織がそこまでいったところで歩夢はおおげさなポーズで言葉を制止した。

いや、そこまででいい。君たちがスールの関係でないことはわかったよ。これは僕にもチャンスがあるかな?

”僕”・・・昨日まで”俺”だったはずだが。まあそれぐらいならできるということか。
富永は割とセリフとは別のところの違いを考えていた。

そうですね・・・。
私謝らないといけませんね。

沙織はくるりと琴絵の方に向き直ると、深々と頭を下げた。

ごめんなさい。スール関係にない方にお姉さまと呼ぶのはとても失礼な事なんです。

え?そうなの・・・まあ同級生だからおかしいとは思ってるけどさ。別に失礼だとは思ってないから別にいいよ。

それはそうとあなたはどちらさまですの?

その言葉を聞いてとりあえず安堵した様子だったが、改めて歩夢に尋ねる。

じゃあもう一度。僕はCS科左山歩夢。今日からこの部活に入ることになった。もっともPCは家から送ってもらったとこだから、一緒にゲームできるのは明日か明後日になるとは思うけどね。

すっと沙織に手を伸ばすと、その手をとって握手する。

歩いて夢って文字だそうからほむほむでいいよね!

いや。その呼び方はやめてほしい・・・正直。それとも君が私のマドカになってくれるのかな?

マドカ?私マイコだけど?

麻衣子が能天気な感じで声をかける。
本当にそのあだ名は嫌なのか、否定する。だが今のキャラクターだと強く否定するのも不自然な感じではある。

わっはっは~~面白いよね。オタクの会話って。

わざとらしい笑い?としながら友紀が会話に入る。
すべての”ネタ”がわかってるのはこの場では彼女だけのようだ。

そういや森さん?
さっきの合宿の話だけど、私とこの佐山さん2人増えても大丈夫なの?あなたのおばあさんが住んでたって家。

先生が合宿の件について聞く。
ほとんど決定事項のようだ。先生としては山林サバゲーを楽しみにしているようにも見えるが・・。

ええまあ。ただガスの契約は止めてるので、基本薪。料理とかお風呂は大人数だと苦労しそうですけど・・・。

そういや…左山さん。結構お嬢様なんでしょ?別荘とかないわけ?

とつぜん先生が振ってみる。

左山さんお嬢様なの?お姉さまだけじゃなくて?!

確かに普通より大きいうちですけど別荘はないですよ。まあお父さんの会社で立てたペンションはあるけど、保養施設なので社員とかの予約で埋まっちゃいますし。というか休みを取らせて使うことを推奨してるので社長家族では行きにくいですね。

・・・・。


うん。確かにお嬢様だ・・・こいつ。と全員思った。

えっと。じゃあとりあえず森さんの田舎の家でアイドル活動のための合宿?を夏休みにやるのは決定なわけね?いつにするの?

あ、サバゲもね。それと日程はできるだけ夏休み前半のほうでね。後半や2学期にはちょこちょこイベント入れ始めるので。

さらっと重大なことを言われた気がする。サバゲのことではないのは確かだが。
全員が一瞬硬直した。

あの・・・先生なんて?

だからサバゲはやるわよ?ああ、エアガンや迷彩服ならこっちで用意するから。おっさん達に借りのもあるから、ちょっとくさいかもしれないけどそれは我慢して・・

いやそっちじゃなくて!!!


全員で思いっきりツッこむ。

ああ。イベントね。とりあえずベイシティのBM STUDIOってところやイベントステージを借りてやるってことなので、場所のスケジュール抑え始めてるわよ?

さーっと血の気が引くような感覚を生まれて初めて感じた。
特に麻衣子と琴絵には衝撃だ。いつも学校帰りに2人で。カナリが部活に参加してからは3人でよく寄ってスイーツの店などで談笑して帰るあの場所。
3Fの空き店舗になにか作っていてその看板を見たことがある・・・まさかあそことは。
カナリにとっては最近引っ越してきた場所だが、あんなに近かったら確実に親も見に来る・・と思うと突然いやな感じの冷汗が額のリボンに浮かんでそれに吸収された。

先生・・・そこ私たちの超地元なんですが・・・


麻衣子が震える声で先生に話しかける。

あら?そうだったの?でも学校の体育館じゃ人集まらないでしょ。
ラブライブとかは私は最近見てみたけどあれで確信したわ。うん。

あの・・子供のころからお菓子とかくれる近所のおばちゃんとかが普通にその場所には居るわけで・・・先生・・分かって・・

あれ?それなら近所のみなさんにも理解されやすいわね。
ほら、商業施設のイベントステージとかオタクっぽいファンの子の掛け声とかが大きいと結構苦情が出やすいみたいだし。


琴絵も援護の意見を言う。が、まったくわかってくれないようだ。
それもそうだ。自分が住んでるすぐ近くでアイドルとしてイベントを行うなんて想定してなかった・・・そんな状況を普通想像できるはずがない。

(だめだ・・・なんとかしないと・・・)

地元組の三人の頭の中からは新入部員のことなど頭から抜け落ちていた・・・が。
それぞれ近くにいた・・・琴絵は沙織と歩夢の手を。麻衣子とカナリは友紀の手をとってこう叫んだ。

お願い!!かわって!!!!

ふ~・・・そこまでいや?

いやに決まってますよ!!!

冷静に考えてみなさい。どうせあなたたちがアイドル活動するのはバレる。というか親には話してあるはずよね。そしてあなた達はステージに立つ。それも近所で・・・。

・・・・。

あなたたちのご両親は期待して観に来るはずよ。その時ステージに居なかったり、端のほうで歌わずにチマチマ踊ってるだけだったら・・どう思う?

まあ・・・それは。

そもそも深く考えすぎよ。ただの学芸会だと思いなさい。そして主役を演じられる・・ぐらいに。というか今ああいう施設ではダンススクールの発表会的なイベントもよくやってるしね。

・・・・

じゃ、とりあえず新入部員君をよろしくね。PC届くまでは私のパソコン使っていいから大まかなゲームルールやコツを教えてもらっといてね~。じゃ!

確かにそうではあるが・・・と部員は考えながら黙り込んだ。とりあえず先生としては抑えているスケジュールを変更することになると面倒なのでとりあえずそういって退散することに。

逃げたな・・

ボソリと友紀がつぶやく。

ともかく・・・ゲームしよっか。

そうだな。アユムさんだっけ?よろしく。

ああ。好きに呼んでくれていいよ。こちらこそよろしく。

じゃあ、ほむほむ。Dirtybombはプレイしたことある?

いや・・・この部活に入ることになって自宅のゲームPCをすぐに梱包しちゃったからな。というか・・

じゃあ会長はこのゲームは初めてか。じゃあトレーニングモードをやってもらうか。たぶんアサルトかファイヤーサポートを手伝ってもらうことになるから・・

あの・・せめて名前は統一してくれないか?


部員たちは顔を見合わせてから・・。

じゃあほむほむで。

ああ。いいな。

確かLMG持ってるキャラいたよね。それを主に使ってもらうとして・・・

おい!!!

じゃあ多数決で。ほむほむでいい人!


ノリで全員が手を挙げていた・・・。

まったく。なんて部活だ。


笑みをこぼしながらそうつぶやいた。

まあなんだ。呼び名なんて自分で決めるもんじゃないよ。もちろん悪意がないことが前提だが・・・呼ぶ側の期待もある・・そういうことだろ?岡野さん。

はい!お姉さま!!!!

なんかいい感じだなぁ・・・と思いながら友紀はふと思った。
ほむほむってまどマギの暁美ほむらだよね。純粋に新しいメンバーにLMG使いがほしいだけじゃね?それ。

~~そう思ったが口に出すのはやめておいた。

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