翌日。今日は野良試合・・・まあ普通のゲームルームでプレイするという感じだ。
まずはどの部屋に入るのか検討する中で、部活のメンバーとの区別がつきにくいことを琴江が指摘する。

そうねぇ・・クランタグつけとく?

クランって?

まあ部隊名というかチーム名・・そんな感じね。数文字が限られるのであんまり長いチーム名はダメだけど。

緑工業高校のeSports部・・・どう略しても長くなりそうだなぁ・・。

う~ん・・・とみんなで考えていると、友紀がふと言い出す。

Torteでいいんじゃない?

トルテ?お菓子とかケーキとかそんな感じ?なんでいきなり・・・

ほら、こないだスマホゲームのキャラの構成に似てるとかなんとか。あれのチーム名だった気がする?違ったっけ?

え?そこからパクってきちゃうの?

う~ん・・まあ短いしそれでいいか。このゲームは別にいくらでもクランタグ変えられるし。なんかいいのが浮かんだら変更ということで。

ということでクランタグのつけ方を先生に聞いて試す。
うろおぼえだったようで、何度か文字列を試してつけることができた。

まあクランタグをつけてるとそれなりに警戒されると思うので注意ね。もちろんチームチェンジ厳禁!

どうしてですか?

そうね。実際クランタグをつけているプレイヤーによるチームチェンジなどによってゲームバランスが崩れることが多いんのよね。当人は友達と一緒に遊びたいだけかもしれないけど、かなりの迷惑行為。片方のチームに偏ると連携によって差が付くことも多いのでマークされることも多いのよ。オブジェクトルールのゲームの宿命ね。

そういうもんですか?

まあそれがオブジェクトルールのFPSゲームが少ない所以かもね。チームやクランでの連携が推奨されるけど、実際連携されると1人や2人組の友達同士の組織力じゃあ太刀打ちできなくなるから。まあとりあえずチームチェンジしなけりゃそいれでいいんだし。


それからは隔日でプライベートマッチと一般でのオブジェクトルールのプレイをしていった。
徐々にではあるが、自分たちが上手くなっていることの実感が出てきたのはそれから一か月ぐらいはかかっただろうか?

実況の視聴者も増えてきているようだ。夕方の時間帯ということで視聴者的にはなかなか伸びないようだが、一般プレイの日は徐々に私たちのことを知ったうえで入室してくるプレイヤーも増えているようだ。
時々ボイスチャットで話しかけてくるがいまいちわからない。
カナリちゃんはそれなりに英語が分かるのか結構対応してる。

大尉って英語出来るの?すごいな・・・そのうえ日本語も韓国語もできるんだろ?


照れながら答える。

いえ、簡単な言葉だけですよ。日本語は試験に合格しなきゃいけなかったので、読み書きも含めて勉強してましたけど、英語はゲームのボイスチャットだけで・・・。

でも英語も勉強してたってことだろ?

そうなるのかな・・?お父さんは日韓関係の冷え込みでビジネス面で韓国語ができるメリットが減ってきているのを感じてて、英語を勧めているのかもしれないけど、勉強したほうがいいとまでは言わないもんなぁ・・部活に入ってないときは英会話教室とかいくならいいよとか言ってたけど。

ふーん。でもまあ将来の事を多少は考えてるんだ。

でもこの学校を選んだってことは、将来の夢みたいなのを反映してるんじゃないんですの?

まあそうよね~。ブラックさんとしては。

うぉい!


そんなやりとりを部室の扉の窓からのぞいている一人の男が居た・・・。

あら校長先生?


その男に富永先生が声をかけた。校長は驚いたようにびくりとして振り返る。

なんだ君か・・びっくりしたよ。

いやびっくりはこっちですよ。
なんですかこんなところで?完全に不審者でしたよ。今の。

はは・・・いやまあ君の部活の子たちはどんな感じかな~と。

そういうのを気にするのがよろしくないのでは?


じとっとした目で校長先生を見つめる。

そりゃまあね。最近はネットでもだんだん注目を集めているらしいじゃないか。

ああ、放送の事です?それほどでもないと思いますけどね・・・。

ということで例のCDの件、この部活の子たちで進めることになったから。よろしくね!

・・・・え・・?あの話本気だったんですか?!

ん?その反応は予想外だなぁ。
てっきり君が担当していたかつてのバージンハートを復活させるつもりであの子達を自分が顧問の部活に入部させたんじゃないのかね?結構、似てるじゃないか。

それは・・違いますよ。入部させたわけじゃありません。


そう否定しながらも思い出していた。琴江が部室の申請を出してきた時こと、そして入試の面接の時を。
確かに彼女たちを過去のバージンハートの2人に重ねていた部分はあったのかもしれない。
でも結果的に仕事もなくなり連絡がとれなくなってしまった。ゲーム開発のスタッフとしての兼任だったこともあって仕方なかったとどこか自分に言い聞かせていた気がする。
だが今だって教師との兼任だ。彼女たちを上手く導くことができるのだろうか・・・。

うつむいて不安げな富永に校長は声をかける。

まあいいさ。別に彼女たちとかつてのバージンハートの子が別人なのは確かだしね。でもとりあえず声優科の先生にはとりあえず2人には別メニューでCDデビューの為の準備をするように指示しといたよ。あくまで声優科の実技の時間だけのレッスンだから限界はあると思うけどね。

・・そうなりますよね。

まあ退学しなければ3年間はあるわけだ。それに・・・他の子もいろいろ考えているしね。ゲームの方も頑張ってくれよ。

そういいながら校長室の方に帰っていく。
ため息をつきながらその方向を見送る富永。
そこに部室の扉がガラッとあいて、琴江が声をかける。

どうしたの?先生。こんなところでずっと立ってて・・。

廊下を歩いていく男に琴江が気が付いてそちらを見る。
ぽんと頭をなでる。

なんでもないわよ。ただの不審者よ。
ふふ・・・それより!


バンと扉を全開にして中の部員たちに告げる。

あんたたち!CDデビュー決まったわよ!!とりあえず時間が取れる土曜日は歌のレッスンするから!覚悟しなさい!!

えぇ~~!!!!

私たちの戦いはこれからだ!

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