そんな感じでPCに関しての都合を確認しあっていたところで、先生が部費の使い道に関して一つの提案をする。

そうね~。FPSをやるっていうんだったら左手用コントローラーとかどう?
BL:R以外のゲームを買うにしてもセールを待ってポケットマネーで買ってもいいし。というか部費申請とかライセンスの問題とかダウンロード販売のゲームは部活での活動で買うには面倒っぽいし~。

琴絵は少し考えてそういうのもあるのか~と納得した。ダウンロード販売の方が安いのは確実だけど、領収書出してって言われたら困りそう。よくわからないし。

うん。そのほうが無難かな?実際FPS初心者はキーボードの扱いがうまく出来ないのがハードルになりそうだし。というか私も使ってみたかった!

まあ実際には好みの問題もあるので使わなくてもいいとは思うけどね。
ちょうど予算的にも確か1万円ぐらいのものだったからちょうどいいかな?

Razerの方ですよね?ロジクールの方は女の子にはおっきすぎるだろうし。

確か今はその会社の二種類だけだったわね。まあ私はまだn52te使ってるからそっちの方がオススメではあるけど。まあそれでいいならとりあえず部員が5人以上になったら少し多めにこちらで注文しておくわよ?

そうだな。部員が揃うまでに他にいいものが思いつかなければそれでいいよな?

琴絵は皆の方を見渡して確認をとる。
そもそも左手用コントローラーというものがピンときていない岡野だけはきょとんとした表情だったが、他の2人は異議はないようだった。

そっか。でもまずは残りの部員集めね。集まったら注文してあげるから、勧誘頑張ってね。
実際ゲームをプレイし始めるまでは私もアドバイスしようがないからあまり来ないとは思うけど・・・じゃあね。

そういうと先生は部室から出て行った。確かに部員を集めてPCを持ってこないことには話にならない。

んじゃまあ・・部員集めだけど・・マイコかユキさん、ポスター作りよろしく!

頭をかきながら当然といった顔で琴絵はポスター作りを依頼する。
まあ絵を描いてのポスター作りならCG科の麻衣子かアニメーター科の森ということになる。

まあ確かに普通の高校だったらちょっと下手な絵がついた部員募集は基本だろうけど・・・

この学校の掲示板にすでに貼られている部員募集のイラストはちょっと異常だった。元々その手の業界を目指している生徒が集まってるだけにかなり上手い。
正直なところオリジナリティの面では弱く、どっかでみた絵柄が多いのではあるが、それでも麻衣子や友紀としてはイラストで勝負したくないって気はしていた。

な・・なにいってんのよ?この部活はゲームの部活でしょ。絵が必要ってわけじゃないじゃない!

遠回しに描きたくないと意思表示する。友紀も同意しているのかはっきりと頷いている。

じゃあどうする~・・

コスプレしましょう!!

黙っていた沙織が突然大声で割って入ってきた。

私とお姉さまでコスプレ!それをポスターにするんですの~・・私達の美貌に引き寄せられて、部室の扉をきっと叩いてくれますわ!

いやいや、ここ女子だけの部活だし。同性のコスプレって逆に引くよ。

これまた遠回しに琴絵もコスプレしたくないと意思表示する。

でもそれもいいかもしれませんよ。コスプレの写真とゲームのスクリーンショットを合成する感じでいけば部活の内容が伝わりやすいかも。

友紀はこういった案を提示する。これならCG科と声優科の3人で作ってくれると判断したからだ。

う~ん。じゃあ顔だけね。ゲームの画面の登場するキャラはユキが描いて、それをマイコがCGとして合成するってことで。

・・・それならって感じで3人が頷く。うわっ、結局私の労力が一番大きいじゃん。シマッタ!

さて、勧誘はポスターを作ることを優先するとして、まずはマイコのPCを買いに行かなきゃな。今度の日曜辺りか~

後悔して頭を抱える麻衣子を尻目に次の予定を考える。まずはPCがなければせっかくこんな部室があるのに活動できない。

そうね。そういえば二人は?なにか買うものないの?

麻衣子はやれやれといった表情だったが、気を取り直して友紀と沙織に聞く。

さっきもいいましたけど、自宅用のPCですかね。

私もグラフィックボードだけでも新しいものにしないとダメだと思いますけど、それぐらいですかね?

そっか。お金のコトとかもあるだろうけど、都合がつくようならみんなで買いに行こうぜ!


琴絵の言葉に少し顔を合わせて頷く。

それからしばらく次の日曜の待ち合わせなどについて雑談したあと、私達は帰ることにした。

(そっか・・。考えてみればこれって私の始めての部活なんだ。)

そんなことを考えながら靴を履き替えるために学校の下駄箱まで戻ってみると、階段下の掲示板で一人の女の子がじっとポスターを眺めているのを見かけた。

なあ、あのコ部活迷ってんじゃない?誘ってみる?


小声で琴絵が麻衣子に耳打ちする。

勧誘はポスター作ってからなんでしょ?それに絵に興味があるならゲームする私達の部活に興味ないわよ。

う~ん。そうかもな~・・

この絵・・上手いと思ったのにほとんど模写だったなんて・・・。


その時漫画研究部のポスターを眺めてそうつぶやいたのは井上華菜里。
コミック科の生徒で韓国からの帰国子女だ。彼女は漫画研究部に入部したが、たった今辞めてきたところだ。
日本語が話せない母親が育児に悩み、結果的に離婚し母親と一緒に韓国に帰国していたが、いつからか将来は日本での生活をすることを決めていた。
だが反日政策での韓国では日本の事が好きだということは決して許されないタブーだ。その中で唯一日本のゲームやアニメ、そしてマンガなどは好きだと言っても許されるもので、彼女にとっての支えでもあったのだろう。

そのせいか彼女の夢は幼い頃から漫画家になることだった。

だがこの学校に入ってまず同じクラスの生徒や漫画研究部の人達と話して愕然とした。
オリジナル作品をつくろうという意欲が大きく欠けていたからだった。
この間まで中学生だった子供にオリジナル作品を作れというのも確かに無理があるとは思うが、アニメやマンガのキャラクターを真似ては上手いと言われて調子に乗って練習をしてきた他の生徒とは大きな感覚の違いもあったのだろう。
部活が始まってまず最初に話し合ったのが、作品をつくろうという事よりも夏にコミケに行く計画だったのだから・・。
結果的には数日でそういった漫画研究部の体質に嫌気がさして辞めてきたところだった。
(やっぱり自分でコツコツ作品を描くしかないのかな・・・)

でも未練があった。
小さい頃から親しんできたマンガやアニメの中の”高校生活”を今自分が体験している。
将来漫画家になるという意味でも、”楽しい部活動”も体験したいのだ。

(そうだよ・・。美南ちゃんだって頑張ってるんだ。絶対に楽しい学校生活を送ってやるんだから!!)

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