その時ちょうど先生がやってきた。麻衣子は話題を変えようと、残りの一人の部員の話に切り替えようとする。
まずは沙織に心当たりがないか聞こうとしたが、さっき自宅にゲーム機も持ってないと言ってたからなぁ。
とりあえずゲームの話かな?

そういえば部費でゲーム買えるんだよね?それって部員が5人集まらないとダメなの?

確かにゲームって人それぞれ好みがあるし、部活でやるからといって特に興味が有るわけでもないゲームを買うのって結構抵抗があるからなぁ。

う~ん。一応そうなるかな?
形としては生徒会が立ち上がってきたら、来年以降の部活関連の予算は生徒に任せることになるから、生徒会が立ち上がる一学期のうちに揃ってるといいわね。

そっか。まずは部員をあと一人何が何でもあつめないとな。
せっかく部室もあるのにこのままじゃあ活動もできないまま終わっちゃうよ。

琴絵のつぶやきに先生が思い出したようにアドバイスする。

でも別に基本無料のゲームでいいんじゃない?
この手のゲームは旦那が詳しいのでオススメのゲームとか訊いてみたんだけど、Blacklight:RetributionってゲームのSIEGEモードとかオススメだって。

え?先生結婚してたの?

別の部分に食いつく麻衣子。彼女にとってはゲームはあくまで友達付き合いのツールなので、そういった部分の方が興味がある。
自分自身ゲーム業界への希望があるが、家庭の幸せとは無縁のような業界なので、元ゲーム業界の富永のプライベートは大いに気になる。

なによ。日常系部活アニメお約束の、美人顧問の先生は婚期を逃しそうで焦ってるかいうお約束を期待してたの?

机によりかかりながらジトっとした目で彼女たちを威嚇する。あまり突っ込んで欲しくないらしい。
その雰囲気のせいで”美人顧問”の所にもつっ込めない・・。

えっと・・・でも基本無料って課金装備買わなきゃダメってイメージあるんだけど。
Pay to Winって言われるぐらいの感じで。

ユキが察して話題を元に戻そうとする。

一般的にはそうよね。でもそのBL:Rとかいうゲームはちょっと古めで、もうほとんど開発が止まっちゃってるみたい。
早期武器アンロックだけできれば、始めたばかりでも長くやってる人とも条件面では変わらないらしいわよ。

じゃあその早期アンロックを部費でやるのかな?
とりあえず部員が集まるまではガマンして・・・。

いや。ゲームの装備ぐらい旦那のゲーム友達に貢がせるわよ。
JKとFPSゲームで対戦できるとか言えばすぐに集まるだろうし、当面の練習相手にも事欠かないから一石二鳥よ。

しれっと先生がとんでもないことを言う。

・・・え~・・いいんですか?それ。
援助なんとかみたいな感じで・・。

大丈夫よ。うちの旦那のゲーム友達なんかみんな遠距離で子持ちのおっさんばかりなんだから。

けろっとした表情の先生に、お互い顔を見合わせてやれやれといった表情。

まあ先生がいいっていうんだったら・・・そういやユキちゃんはいいの?何かプレイしたいゲームがあるんじゃないの?

麻衣子は友紀のほうを振り返って確認する。

いえ。大丈夫です。というか大好物です。
先生の旦那さんなかなかマニアですね。

振り返った先には、なぜかニヤニヤした表情で立っている友紀が居た。どういうゲームなんだろう・・・BL:Rって。

じゃあ当面プレイするゲームは決まりだな。
じゃあ部費は?なんに使うの?

琴絵が先生に問いかける。

お金のことばかり気にしているようだが、実際には顧問の富永から幾つか条件を出されているのがあったからだ。
まずコンシューマーゲーム機などの禁止。これは富永からみれば”家でやればいいじゃん!”ということで、原則部活でのプレイを禁止ということになった。
そしてPCゲームが主体ということになったが、さすがに部員全員分のPCを部費として買うわけにはいかない。吹奏楽部の楽器などは多少高くても部費で購入して、何年も使っていくということもできるだろうが、パソコンは数年で性能が大きく向上するからだ。
だからこそ部員は全員部活用のPCを買うことになってしまった。

なので部費は初年度はだいたい部員一人あたり1万円が目安。それ以上の予算が必要な部活は別途申請と言われていたので、部費はゲーム代金~~ということになっていた。

女の子でPC一台を部活のために用意するのはさすがにハードルが高い。琴絵としては”PCさえ買えば部活でゲームが遊び放題”みたいな謳い文句で部員の募集を考えていたようなので、そこは気になるところだったんだろう。

やっぱり基本に立ち返って、ティーセットとか?!

麻衣子としてはそれほどオタク度が高く無いとはいえ、やはり”マンガやアニメのような部活動”をしたいようだ。
というか女子高生が部活でまで閉じこもってゲームしたくない。放課後ゲームタイムとか楽しくないじゃん!!

でもここには高級なお茶の葉やお菓子を持ってくるお嬢様とかいませんよね。
金髪ロリもアテナの方と違って金持ちじゃなかったよね?パソコン大丈夫なの?

誰が金髪ロリですの!

アーケードゲーム以外はそれほどゲームに詳しくはない岡野はここまで黙っていたが、ここはキャラを演じる意味でも突っ込んでみる。

ワタクシのお父様、PCに関しては自作派ですのでパーツを高性能にしては、おさがりのパーツで作ったものを押し付けてきますの。
若干のパワーアップは必要でしょうけど、それで大丈夫だと思いますわ。

(・・・お父様?いや、自分の演じてるキャラがそういう口調ではあるんだけど・・・)
沙織は自分の父親の顔を思い出しながら、自分自身の発言に違和感を感じていた。

ふ~ん。そういえばユキちゃんは大丈夫なの?ゲーセンじゃその辺の詳しいことを伝えてなかったけど。

その会話を聞いて麻衣子も友紀に確認を取る。

ええ。部活用にPCを持ってくるってことですよね。私もゲーム仕様のパソコンのお下がりをお父さんにもらってますので。
まあ部活用に今のPCを持ってくると自宅にもPCは欲しいですけど、そっちはそれほど高性能じゃなくていいですから。

実は彼女の父親は単身赴任中で、毎晩スカイプで親子の会話をある程度するのが約束になっている。
とはいえ毎日会話してるとネタにも困るので、父親とオンラインゲームを始めるようになったのが彼女がPCゲームに詳しい理由でもあった。
子供の頃は最新ゲームの動くPCを買ってもらう事もできて、それなりに楽しかったのだが、高校生にもなってくるとさすがに毎晩肉親とのゲームで何時間も費やすというのは抵抗があった。
まあスカイプで数分会話する程度で切り上げたいところでもあったので、今回の部活用PCの持ち込みはむしろ自宅でゲームをやらない理由になってちょうどいいと思っていたぐらいだ。

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