母は、良い母ではなかったかもしれない。でも、私にとっては良い母だった。母の言葉はけっこうすっと来るのだ。

 みんなと一緒にいるのはいいことよ。でも、一人で生きる力を身に付けなければならない。
 だって人は元々一人なんですもの。

 それは母が見つけた答え。正しいと完全には言えず、正しくないとも言えないものだった。でも、あの家にいた私にとっては正論だったのだ。

 母のお墓参りを終えて、義母が経営するカフェで休息をとる。新作のケーキを食べて感想を述べる。

野川 詩音

最高においしいです。幸せな味がしますよ

 最近、チョコとかコンビニで簡単に帰るものばっかりだったので、たまにはケーキとか本格的に凝っているものを食べないとなあと反省した。

よかった。詩音の一言でメニューに載せる気満々になったわ

野川 詩音

そんな大げさな。真由子さん、堂々と自信を持ってもいいのに

自信をもったら、持ったでナルシストになるかもしれないのよ。人様に出すものはちゃんと吟味しなければならないからね。自分がいくらよくても、押し付ければこれは作品じゃなくてゴミになるもの

 義母との出会いは、あの人たちは再婚するときの顔合わせと思っているが、本当は母の墓場だ。
 母の死後、誰も来なかった墓参りに義母はまめに通っていたそうだ。母にはたくさんの仲間がいたそうだが、今は遠くに行ったりしてなかなか墓参りに行けないという。一番近い義母が母のためにしようということで、花を入れ替えたりしていた。

 今日は店を休んでいる。私のためにだ。

野川 詩音

真由子さん、これ以上は無理ですってば

 お菓子はうれしいが、たくさんは食べられない。この日のために盛大に作ったのだが……。

 ケーキにマカロン、ゼリーにババロア、ミルクセーキやら数えるのが面倒くさくなってしまうほどテーブルから落ちないかというくらいぎりぎりいっぱいにお菓子がたくさんある。ランチのおかずもある。

いいのよ。今日は手伝いも呼んだから

と話していると、店に誰かやってきた。
カランコロンとドアにかけられている鐘の音がして、目を移すと知っている人が二人来た。

え、詩音ちゃん?

野川!?

憧れの人と、そして学校の先輩。
その二人が一緒に現れて驚く。真由子さん、知り合いだったのか。いや、それよりも颯太先輩と俊樹さん、どんな関係なのだろうかと思った。

あ、そうだ。着いて早々ごめんねだけど、俊樹くん、買い物に付き合ってよ

わかりましたよ。いつものことですから

カフェには、颯太と詩音が残された。留守番を頼まれた詩音は早速待ってましたと言わんばかりに、俊樹との関係を質問した。

表にでない、いろいろなこと

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