夜道を歩きながら、結人に聞いた。
時刻は六時前だったが、秋はあっという間に日が暮れる。民家など無い、街灯もまばらな田舎道をとぼとぼと歩く。
夜道を歩きながら、結人に聞いた。
時刻は六時前だったが、秋はあっという間に日が暮れる。民家など無い、街灯もまばらな田舎道をとぼとぼと歩く。
お前、ほんとに良かったのか?
夜道を歩きながら、俺は結人に聞いた。
寒さのためか、今更ながら帰ることが怖くなっていた。結人に助けを求めたかった。
なんで? 善ちゃんの育った家、見てみたいよ、オレ
りんごも食べたいしと、小さなリュック一つで青森まで着いてきた二つ年下の同居人は、そういって俺の右手を握る。
我が家のリンゴ園は岩木山がよく見える。
標高一六二五メートル。この高さでも独立峰であるがゆえの存在感が、人々の心に雄大さを感じさせている。
その山の頂がかすかに白くなり、山肌の紅葉が燃えるように美しい十一月。主力品種のふじの収穫が最盛期を迎えていた。
おかえり、寒かったでしょ
うん
電話くれれば迎えにいったのに
うん
ごはん、食べるでしょ
うん
家族のごくありふれた会話を目を丸くして見ていた結人が、その長身ですっと前に進み出た。
はじめまして。野中結人です。善一朗さんとはとても仲良く暮らしています。善ちゃんの料理すごくうまくて、お母さんの料理を真似て作ってるって言ってました。だから今日はすごく楽しみにしてきました
おい・・・
お前は嫁か。
結人の我関せずといった顔に、虚を突かれた母は大笑いした。
この家を出て以来、久しぶりに聞く母の笑い声だった。