弘前駅についたのは午後三時半を過ぎた頃だった。

結人

ここが善(ぜん)ちゃんの生まれ故郷かー

 白い息を吐きながら暮れ方の空に向かって結人がしみじみとそうつぶやく。

善一朗

そうだよ

 東京生まれ東京育ちの結人にはもの珍しいのか、路線バスの中から目につくもの、耳に入るものに喜々として声を上げた。

次はコンヤマチカド、コンヤマチカド

結人

コンヤマチカド?

 俺はバスの前方を指す。

結人

ああ、紺屋町角ね。へー

 この町には、昔ながらの地名が多く残っている。地元民には別段気にもならないが。

 桜であまりにも有名な弘前公園そばの紺屋町角からさらに北へ向かってしばらくいくと、最寄りのバス停に着く。

 バス停から小路に入るといきなりリンゴの木々が道の左右に現れる。

結人

寒っ


 結人が身震いをした。

 辺りはすっかり暮れていた。

第七話 コンヤマチカド

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