大学三年の春だった。その夜、俺はひどく沈んでいた。どれくらい沈んでいたかというと、正に、地球の滅亡を心から願うほどに。世の中の全ての幸福という幸福を、一握に潰してしまいたいと強く望むほどに。

 その日、大学の帰りしなに女に告白された。

女に。

地球上の半分の性別を持つ人間。俺にとっては、選べない性に。選ばれてしまった。

 その女性は、俺より二つ歳下で(結人と同級生だったと後で知った)多くの男性に求められるような、とても美しい女性だった。

 俺は断るしかなかった。

天が決めたこと。俺にはどうすることもできない理由だ。

善一朗

俺なんか、花園さんにはもったいないよ

 うそを、ついた。
 つきたくもない、うそを。
 せめて真実を、言いたかったのに。

 彼女の噛みしめた唇を、泣くまいと強く引き結ばれた眉を、俺は忘れまいと思った。

 それは俺の十字架だ。

 そのまま大学近くの居酒屋に入った。飲めないのにビールを飲んで、つぶれた。

 そこで働いていたのが、結人だった。

結人

お客さん、もう閉店だよ。ビール一杯で、酔いすぎだよ

善一朗

 揺り動かされて目を覚まし、時計を見て驚く。午前一時半だった。

 そんなに寝ていたのか。

 立ち上がろうとするがうまくいかずふらつくのを結人が支えてくれた。

善一朗

やさしくしないでくれ

結人

え?

 よく覚えていないのだが、そう言ったらしい。

 目が覚めたら、結人のアパートのシングルベッドに二人で寝ていた。裸だった。

 いつのまにか車窓の風景が様変わりしていた。

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