善一朗

しかたないだろ、俺ゲイなんだよ

 がやがやしていた空間が、テレビの消音ボタンを押したかのようにシーンとなった。

善一朗

ついにいっちまった

そう思って、消えてしまいたくなった。

 田舎は、セクシャルマイノリティーなんてことを理解も容認もしてくれるはずがないのに。

 こんな閉鎖された場所で、人々の中で、俺のような奴の居場所は無いのに。

 サイアクだ。

 だけど、そんな俺の思いとは裏腹に、俺の両親は、間の抜けた顔で時間が止まったように動かなかった。

 さらにサイアクなことに二人は『ゲイ』そのものの知識が無かったのだ。

 そこから説明すんのか、俺が。

 ますますサイアクだった。

 子孫を残せない。
それは過疎の進むこの地では絶望を意味する。周りの人は何も言わない。言ってはくれない。いたたまれない気持ちに苛まれながら生きろと、俺は両親に言ったも同然だ。

 母は泣いていた。肩を震わせて泣いていた。父は、父は何も言わずに新聞を手に取ると台所を離れ、居間であぐらをかいてそれを静かに読み始めた。

 でも、確かに言っていた。背中で言っていた。

哀しいと。

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