性について、つまり俺がゲイだってことを伝える勇気が俺にあったのか、今となっては疑問だ。

『勇気』だなんて二文字では済まない、多くの心理的事柄が、頭の中や心の中で渦巻いていて、伝えるか伝えないか、その二択が数ヶ月間俺の脳内を支配し続けた。

 伝えない選択はあったし、死ぬまで黙っていようかと何度も思った。

ただ、周りの環境が、人が、文化が、それを俺から退けた。

 きっかけはそう、牛乳を買い忘れたとかなんとか、そんな些細な事だったと思う。

俺は東京に就職して最初の年だった。記録的な猛暑を、テレビが伝えていたのを覚えている。

話がいつの間にか『いつ結婚するんだ』とか、『同級生はとうに子供がいる』とか

『どうやって生きていくつもりだ』とか、話のスケールがどんどん大きくなって、互いに後に引けなくなっていて、

俺は俺で考えてるのに、そんなことをいちいちツっこまれて、イライラして、言ってしまった。

そう、いってしまった。

善一朗

しかたないだろ、俺ゲイなんだよ

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