――DAY 5――



宿屋『サスリカ』

ファイーナ(ファーヤ)

どう?
これイーリャのものじゃないかしら?

イリヤ(イーリャ)

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

――前日深夜――

セミョーン(ショーマ)

……なんでこんなものが今更落ちてたのか

ファイーナ(ファーヤ)

……無色だけど、アルセニーの顔に見えるわ

ねえ、鉛筆画って……

セミョーン(ショーマ)

いや、イリヤじゃないな。記憶にあるのと絵の濃さが違う

濃さ?

セミョーン(ショーマ)

筆圧だよ。あいつの描いた妹の絵よりも薄い

……俺の記憶が正しけりゃ、この町にこんな絵が描ける奴はイリヤ以外にいないが、筆圧の強い奴が薄く描くのはそうそうできるもんじゃねぇ……

でも、絵の雰囲気は似て……

セミョーン(ショーマ)

そこだよ

どうやらイリヤの一家は画才があるようだな。きっとこれは、リーリヤ嬢ちゃんの描いた絵と文字だ

『何も知らない顔で、俺の代わりに渡してみてくれ』って言われて持ってきてみたけど……どうかしら?

イリヤ(イーリャ)

こ……これ、リーリヤの字です!

絵も、こんな感じで……

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

なんで、それが……

ロッタの様子が変ね?

ええっ?
そうなの?
じゃあこれ、リーリャちゃんからのメッセージってことかしら!

きっと、そうだと思います!

……じゃあ、やっぱりちゃんと生きてるんだ、リーリヤ……

そうに違いないわね!

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

…………

あ、押し掛けちゃってごめんなさい、ロッタ。おはよう!

あ、ああ、おはよう……

ロッタは速足で奥に行ってしまった。

あ……!

どうしたの?

いえ、シャルロッタさんに話が……

……ファイーナさん、何かつけてます?

イリヤはわずかにファイーナと距離を取った。


香水とかはつけてないけど……

あ……たぶん気のせいです、ごめんなさい

あ、もしかしたら煙草かも……苦手だった?

ああ……僕ちょっと苦手で……

子供だもんね。気をつけるわ

僕、子供じゃないです

あはは、そうだったわね

じゃ、頑張ってね、イーリャ! 応援してるわ!

ファイーナも紙を押し付けると

その場をあとにした。

……これで、いいのよね?

…………?

さっきの間に、何故かすごく違和感を覚えたんだけど……何かしら

……

ちゃんとある……こじ開けられた形跡もない……

なのに……どうして……

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