――DAY 5――
朝
宿屋『サスリカ』
――DAY 5――
朝
宿屋『サスリカ』
どう?
これイーリャのものじゃないかしら?
!
!
――前日深夜――
……なんでこんなものが今更落ちてたのか
……無色だけど、アルセニーの顔に見えるわ
ねえ、鉛筆画って……
いや、イリヤじゃないな。記憶にあるのと絵の濃さが違う
濃さ?
筆圧だよ。あいつの描いた妹の絵よりも薄い
……俺の記憶が正しけりゃ、この町にこんな絵が描ける奴はイリヤ以外にいないが、筆圧の強い奴が薄く描くのはそうそうできるもんじゃねぇ……
でも、絵の雰囲気は似て……
そこだよ
どうやらイリヤの一家は画才があるようだな。きっとこれは、リーリヤ嬢ちゃんの描いた絵と文字だ
『何も知らない顔で、俺の代わりに渡してみてくれ』って言われて持ってきてみたけど……どうかしら?
こ……これ、リーリヤの字です!
絵も、こんな感じで……
!
なんで、それが……
ロッタの様子が変ね?
ええっ?
そうなの?
じゃあこれ、リーリャちゃんからのメッセージってことかしら!
きっと、そうだと思います!
……じゃあ、やっぱりちゃんと生きてるんだ、リーリヤ……
そうに違いないわね!
…………
あ、押し掛けちゃってごめんなさい、ロッタ。おはよう!
あ、ああ、おはよう……
ロッタは速足で奥に行ってしまった。
あ……!
どうしたの?
いえ、シャルロッタさんに話が……
……ファイーナさん、何かつけてます?
イリヤはわずかにファイーナと距離を取った。
?
香水とかはつけてないけど……
あ……たぶん気のせいです、ごめんなさい
あ、もしかしたら煙草かも……苦手だった?
ああ……僕ちょっと苦手で……
子供だもんね。気をつけるわ
僕、子供じゃないです
あはは、そうだったわね
じゃ、頑張ってね、イーリャ! 応援してるわ!
ファイーナも紙を押し付けると
その場をあとにした。
……これで、いいのよね?
…………?
さっきの間に、何故かすごく違和感を覚えたんだけど……何かしら
……
ちゃんとある……こじ開けられた形跡もない……
なのに……どうして……