――DAY 4――

深夜

空き家『ミーシャ』

セミョーン(ショーマ)

……よし、これで隙間風はとりあえず塞げただろ

工具を放り出してセミョーンは振り返る。

とりあえず、修理はこれで全部だな

ファイーナ(ファーヤ)

……久しぶりに来たけど、けっこう綺麗なまま保たれてるのね、ここ

セミョーン(ショーマ)

時々使ってるからな。
……寒くないか?

うん

セミョーン(ショーマ)

本当にタフだよな、お前

ファイーナ(ファーヤ)

生まれつきここで暮らしてるもの

それにしても、大吹雪の中歩き回って元気だな

ショーマもでしょ?

あ? 俺は強くねぇよ

セミョーンは暖炉に近づくと、

マッチを擦った。

ショーマって、煙草吸うんだっけ

セミョーン(ショーマ)

普段は控えてるんだがな。嫌いか?

服に臭いが染みつくのは嫌だけど、酒場に入るくらいなら大丈夫よ

ふうん

セミョーンは一瞬目を細めた。

ゆっくりと煙が膨らんでは

二人の間を流れてゆく。

ねえ、控えてるなら、なんで今は吸ってるの?

マーキング

え?

ああ、顔には吹きかけないから安心しろよ

ど、どういう意味?

さあな?

……それより、疲れてないのか?

うん……ちょっと眠いけど、大丈夫

いや、それもだが、さっきの事だ

ファイーナ(ファーヤ)

だから、その話をしましょ?

そうだな……

紫煙はふわりと優しく

輪を描いて広がる。

俺があいつにさっき投げつけたのは、憑りついている幽霊や神話生物など、目に見えない存在を実体化させる粉だ

だが、一瞬とはいえ、そういったモノが現れる様子はなかった

ファイーナ(ファーヤ)

どういうこと?

セミョーン(ショーマ)

『あいつ』は、自分の肉体を動かしてるってことだ。幽霊や神話生物が死体や人形に憑りついてるってわけじゃねぇ

ファイーナ(ファーヤ)

例えば、アルセニーがゾンビになって動いてるとか?

あり得る……んだけどな。まだ、誰かに操られている可能性はある

それと、あの姿に違和感があったんだよな

違和感?

ああ……俺の予想が正しければ、あいつは昼間には出てこない

――DAY 5――



宿屋『サスリカ』

イリヤ(イーリャ)

シャルロッタさん、話を聞かせてください

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

……

イリヤ(イーリャ)

リーリヤのこともそうですけど、噂になってること……どういうことですか?

……朝食はさっさと済ませておくれ

……なぜ、教えてくれないんですか? 何か後ろめたいことでもあるんですか?

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

さてね

イリヤ(イーリャ)

シャルロッタさん!

あんたには、話すことは何もないよ

イリヤ(イーリャ)

時間がないんです!

知らないって言ってるだろ

……あんたも大事かしれないが、あたしだって息子が大事なんだよ

イリヤ(イーリャ)

……どういう意味ですか

ファイーナ(ファーヤ)

ロッタ、ごめんね!
イーリャに渡したいものがあるの!

ファーヤ……

ファイーナ(ファーヤ)

あのね、昨日、こんなものが落ちてるのを見つけたの! 何か心当たりない?

ファイーナが取り出した紙には、

鉛筆で男の顔が描かれていた。



アルセニー・エリコヴィチ・ロバチ、

まさに話題の中心の男が。

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