歓迎会は大成功だった。
歓迎会は大成功だった。
考えていたことより、江岸を見て感じたことを素直に話した。
作ったオリジナルメニューも好評で、老人からお礼を言われたくらいだ。
工藤、お疲れ様
工藤くん、お疲れ様でした
コックやクラスのみんなが声を聞いてくる。
なんだか、少しくすぐったい。
しかし、驚いたな。あず姉が燕ノ巣に集合って言うから来たら、工藤の手料理が食べれるんだからよ
工藤は岸ノ巻に来る前に居酒屋で働いていて、そこの親父さんから教わった料理をアレンジしたんだ
厨房で隣で調理していたコックが説明した。
海道はへぇ~、と感心していた。
料理のアレンジなんて…すげぇな
必要だったから。料理だって一人暮らしのための練習みたいなものだったし
何故かニヤニヤする海道。
変なことは言ってないのだが。
謙遜だと思ったのか。
工藤くん
今度は時雨先生と浦部先生、それと見知らぬじいさんだった。
あぁ、工藤くんは知らないんだっけ。こちらは校長の浅海嚴校長よ
今宵の至極美味な晩餐、堪能させてもらいましたぞ
随分と堅苦しい言葉を使うじいさんだった。
たしか、工藤くんは校長がぎっくり腰で休んでおられる時に転校して来たのでしたねぇ
…………!!
浦部先生がニヤニヤしながら言う。
浅海校長の顔が赤くなる。
上司をいじってどうするんだ、この人は。
明日、改めて集会で話をしましょう
時雨先生に連れられ、校長達は帰っていった。
工藤
次は露樹さんと料理長だ。
なかなか良いスピーチだったわ。感動しちゃった
それは俺やここのコック、そして岸ノ巻市民全員もだ。お前は俺達に勝ったんだよ
そして自分自身にも…ね
………はい
その通りだと思う。
一人では無理だった。
色んな人がいたから俺は前に進むことが出来た。
中でも一番力になったのは……
ハッと周りを見渡した。
彼女の姿はない。
どうした?
江岸を見てませんか?
あぁ、と露樹さんが答えてくれた。
あの子から預かってたわ。はい
渡されたのはメモ用紙。
そこには……
工藤くんへ
北の白浜で待っています
区切りがついたら来て下さい
江岸梨奈