……タ

……ロッタ?

……!

――DAY 4――

午後

宿屋『サスリカ』

シャルロッタは、声に気づいて初めて、

自分がしばらくの間

呆然としていたことに気づいた。

アイラト(ラートカ)

大丈夫か?

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

ラートカ……一体どうしたんだい?

いや……この前は悪かったと思ってな

アイラトはやや目を伏せて

カウンターの前に立っていた。

アイラト(ラートカ)

お前がいろんなことに慎重なのはいつものことだ。それに、客の安全を預かる仕事だ

俺はあんなことを言うべきじゃなかった

ロッタ、何故あの男を泊めた?

あんな男、いっそ遭難しちまえばよかったんだ

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

……あんたは正直者だね

ロッタはため息をついた。

……あたし、町の人たちは嫌いじゃないの。でも、今はちょっと苦手

ファイーナは呟いた。

町角には誰もいない。独り言だった。

だって、洗脳されてるみたいなんだもの

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

あたしは慎重すぎるのかもしれないね。きっとそうだ

もっと早くに言うべきだったことをここに抱え込んだまま、待っちまうのさ

シャルロッタは自分の胸を軽く押さえた。

アイラト(ラートカ)

お前、何か俺達に黙ってることがあるのか?

あんたに、じゃないよ。でもそうだね、あんたにもまだ言えないんだ。
許しておくれよ、約束したんだ

約束?

ずっと『かみさま』を信じるのが、それに依存するのが当たり前みたいに思ってきたから……

なぜか、疑わなかったのよね。
よく考えればおかしな現象も、受け入れてしまう

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

……ねえ、ラートカ。私はこの間、息子に会ったんだよ

なに?

息子って……

…………墓参りじゃなく
アルセニーに会った、のか?

あたしもそうだったけど、やっぱりおかしいのよね

人が生き返ることもあり得るなんて思って、生贄を捧げてたんだもの

でも、当時は本当にそうだと思ってた

シャルロッタは、遠くを見るような目で微笑んだ。

少しだけ、生き返って来てくれたのさ

……そんなことも、あるのかもな

アルセニーは小さく息をついた。

みんな思考が異常なのよ

冒涜的な呪文で無理矢理引き戻さない限り、人は、生き返らない

相づちを打つのは朔風だけ。

そしてあたしは、その生き返った人間が幸せだなんて思わないわ

絶対に。

pagetop