――DAY 3――

午後

町中

セミョーン(ショーマ)

じゃあ、後でリーヴィニを引き取りに行く

ファイーナ(ファーヤ)

ねえ

去ろうとしたセミョーンを

強くファイーナは引き留めた。

曲がりなりにもオジョーサンがそんな物理的な力で引き留めるなよ……

なんで、何が起きてるかあたしには何も話してくれないの?

セミョーン(ショーマ)

何が、ってなんだよ。何か起きてるみたいじゃねぇか

起きてるんでしょ?

ファイーナ(ファーヤ)

そもそも、ショーマが追い返してたあの変な宗教家、あれはなんだったの?

……あれ? そんな奴いたか?

いたわよ! 流石に誤魔化されないわ

冗談だよ。覚えてるって

そう、覚えてるのね?

ファイーナ(ファーヤ)

出かけるとき、帰ってきたら詳しく説明してくれるって言ってたの、覚えてるのよね?

…………

肯定ってことね?

……はぁ。いつも通り、聞いた後にはその大口閉じてくれるんだろうな?



セミョーンは深く息をついた。

ファイーナ宅

セミョーン(ショーマ)

あの男……20日くらい前に泊まりに来た男は、ただの宗教家じゃねぇ

ファイーナ(ファーヤ)

やっぱり、『神話生物』なのね?

人間だよ。神話生物を信仰してて魔術をいくつか知っている、ってだけのな

ファイーナが当然のようにその名を口にすれば

セミョーンも常識のように言葉を重ねた。

魔術……久しぶりに嫌な語

そんなこと言ってちゃこっから先聞いてられないぜ

ファイーナ(ファーヤ)

冗談よして

ファイーナは目をきゅっと見開いた。

あなたが、色々教えてくれたんじゃない

この町がおかしいことも、『かみさま』が神じゃないことも、化け物がこの世には他にも存在するってことも、魔術のことも教団のこともみんな!

……そうだな

ファイーナ(ファーヤ)

……ごめんなさい。あたしが自分の意志で聞きたいって思ったのよ

……

傷ついてたあたしを慰めようとしてくれたんでしょ?

まあ……3年前のお前は目も当てられなかったからな

見てらんなかったんだよ

ファイーナ(ファーヤ)

……ふふ

……さ、本題に入りましょう?

セミョーン(ショーマ)

俺がここのところ町を出てたのは、あの魔術師が何者なのか探るためだった

ファイーナ(ファーヤ)

どんな神話生物を信仰するどんな教団に所属してるか、ってことね?

分かったの?

セミョーン(ショーマ)

一応な。どんな神話生物か聞きたいか?

聞かない方が良いくらい危険なの?

セミョーン(ショーマ)

それは……どうかな。まあ、最近勢力を伸ばしてきた小さな教団とだけ言っておこうか

勢力の拡大のために、様々な人材を集めていたらしい

人材って?

新しい信仰者、魔術の才能がある者、それと生贄だ

まさか……

セミョーン(ショーマ)

リーリヤって娘が来た時期は、あの魔術師が来たのと同じだ。
イリヤは、嬢ちゃんは友人に呼び出されたと言っていた。嬢ちゃんのついた嘘の可能性が高いな

……俺は、魔術師が嬢ちゃんを狙い、脅してこの町で会う約束をさせていたとみてる

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