しかしその問いに、左耳に配したイヤカフ型の機器を通して即座に答える『システム』の声を無視して、尤理は透明な窓の外で落ち続ける細い線に見入っていた。
氷雨と、霰と、雹。
違いは、何?
それは……
まあ、いいけど。
しかしその問いに、左耳に配したイヤカフ型の機器を通して即座に答える『システム』の声を無視して、尤理は透明な窓の外で落ち続ける細い線に見入っていた。
どちらにせよ、この天気と寒さでは、外には出られない。
折角の休日時間なのに。
窓の向こうの濃い灰色の空を見上げ、息を吐く。
町や村を人工知能とともに管理する。それが、尤理の職務。短期間での異動を義務づけられている仕事の合間に、一つとして同じ所の無い小さな町を散策するのが、尤理の気晴らし。
次の休日時間は、晴れると良いな。
五日後の天気ですね。
思考に反応し、脳裏に天気予報が響く。
……。
窓の外の空の色にその声を重ね、尤理は大きく微笑んだ。