部屋に戻ればメイドがいるのは分かりきっているのに、どうしてこんなに驚いているんだろう。
メイドが都合よくメンテナンスか何かで部屋にいなければいい。
そう思ってたからに決まっている。
脳裏でさっきの光景が蘇る。
薬欲しさに襲い掛かってくる男性。
胸を貫き、血だまりの中で佇むメイド。
部屋の患者が死んでも、何事もなかったかのように佇むメイド。
どこまでも機械的で作業然としている、不気味な姿がフラッシュバックする。
はあっ……はあっ…………!
お帰りなさいませ、深雪様
ひっ!
部屋に戻ればメイドがいるのは分かりきっているのに、どうしてこんなに驚いているんだろう。
メイドが都合よくメンテナンスか何かで部屋にいなければいい。
そう思ってたからに決まっている。
脳裏でさっきの光景が蘇る。
薬欲しさに襲い掛かってくる男性。
胸を貫き、血だまりの中で佇むメイド。
部屋の患者が死んでも、何事もなかったかのように佇むメイド。
どこまでも機械的で作業然としている、不気味な姿がフラッシュバックする。
うあっ、あっ あっ
深雪様?
世界がぐるぐる回っていく。
気持ちのいい目覚めなんてどこかに吹き飛んでしまった。
目の前にいるメイドも、配置が恐ろしく似ているこの部屋も、なにもかもが怖い。
誰も死んでいないのに、鉄の匂いが鼻を満たそうとしていく。
呼吸が
だんだん
早くなって――――
深雪様――――
耳を思い切り覆った。
痛いくらいに目をつぶる。
もう何も見たくなかった。
私は、ここに悪夢を見なくするために来たはずなのに、どうして夢より生々しい悪夢を見なければいけないの?
べっとりと付いた血のように、さっきの光景がこびりついて離れない。
これなら覚めたら終わりと分かってるだけ、悪夢の方がマシだった…………!!
…………
深雪様、大丈夫ですか?
触らないでよッ!!
…………
差し伸べられた手を、思い切り跳ねのけてしまった。
一瞬見えたメイドの顔が驚きで一杯だった。
その驚き方は、あまりにも人間じみてて…………
それが、私の心を更にかき混ぜていく。
せんせ……せんせぇ…………っ
怖いよ……たすけて、せんせぇ…………っ
先生はどこにいるのだろう。
いつになったら会えるのだろう。
また前のように寝る私の横にいて、優しく頭を撫でてほしい。
大丈夫だよって微笑んでほしい。
もう、こん世界嫌だよ……っ
……深雪様、貴女は今壊れようとしている
現実に絶望して何も見たくないならそれでも構いません。ならばせめて、夢の中だけでも楽しい時間を過ごしてください
薬……
どうしてだろう
さっきの男性の薬を求めてる姿見て、危険だって知ったはずなのに。
今の私は、それがとても魅力的に見えた。