死体は見つからない。簡単には見つからない。殺人鬼の動きを完全には負えない。自分は殺人鬼ではないから。

野川 詩音

そういや、桐子のお母さんが言っていたよね。たしか4月の終わりごろにある人物に出会うって

 桐子の母親は占い師である。この殺人鬼を探して殺した理由を探そうという活動もいつか終わるらしい。結末は悲しいものになるらしいが。その活動が終わるきっかけというのが潤たちが率いる防衛隊に会うことによるものだという。

本当に当たるとはね、母さんの力は偉大だ

 桐子は母親の能力を認めているが、自分に告げられた予言が気に食わない。人を信じられるようになるということだ。醜い面を持つ人間をどう信じるようになるのだろうかということは教えてくれなかった。

死体は見つからずか……。予言もなし

 犯人による落書き、予言はなかった。今日はこれでおしまいにしようと踵を返すとブランコに誰かがいるのを見つける。

野川 詩音

え、女の子?

 この時間なら子供はぐーすか寝ているはずなのだが、なぜかブランコに座っている。ぬいぐるみを抱いてにこにことしている。

野川 詩音

こんばんは

 世話好きな詩音がさっそく女の子に声をかけている。女の子は可愛い声でこんばんはと返事を返す。ああ、なんて天使みたいな可愛い子なんだろうとうっとりしている場合ではない。桐子も詩音に続いて挨拶した。

 少女の名前はひなという。なぜ、こんな時間に公園にいるかという話だが……。

お母さんを探しているの

野川 詩音

お母さんを探しに?

 すっかり女の子と詩音は親しくなっている。桐子は親はこんな夜に、しかも殺人鬼が出ているかもしれないときに何をしているのだと静かに怒っていた。

あれ?桐子?

え、あ?

 はとこに出会った。小邑 将也(こむら しょうや)
に出会うとは思わなかった。こんな時間に外出しているとはこの人は不良になったのだろうか?

あれ、桐子って隣町に住んでいるはずじゃ?

え、もしかしてここって

 今自分たちは住む町の隣町にいるということがわかった。いつの間にか遠くまで歩いていたのだ。

友のために殺人鬼探しをしていたら、子供を見つけたということか

将也くんはどうして外に出ているの?勉強はどうしたの?

 将也は優等生として小邑家の次期当主になるだろうということで名門校に通っていたはずだが、自分の将来について考えるために真夜中を出歩いているらしい。

人助けとかボランティアってやつかな。そんなことをしていたらいつの間にか夜の紳士って通り名をつけられたんだよ

 ここは人助けとして加わることになった。詩音に将也を紹介する。

小邑家の本家跡取りの

いや、本家はそっちでしょう

いやいや、そちらが偉い人だよ。いつも世話になっているし……

いやいやいやそちらのおかげで、俺たち生活できているし

 とグダグダな紹介になってしまった。女の子からのどっちも偉い人なんだねという一言で片付いてしまった。

将也~、どこ……って何この子!?超可愛い!!

 ふらりと現れた将也の知り合いが女の子を見て目をきらきらと輝かせた。麻希は将也に助けられた一人であり、彼を崇拝している。子供好きで面倒見がいいということで詩音とも打ち解けた。

ここら辺は、まあ、あーだからね

 と顔を曇らせる。子供がたくさんいる地域なのだが恵まれないというかなんとも言えない問題を抱えている人たちが集まっているというのだ。放置児は珍しくなく、育児放棄もちらほら見かけるとか。確かにさっき赤ちゃんの泣き声が聞こえて随分と長くなくなあと思ったら30分くらい泣き続けていた。親は何をしているのだろうという疑問と、あの赤ちゃん放置されていて大丈夫かと不安を抱いた。

よし、ひなちゃんのお家に行きますか

 と私たちは公園を後にした。

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