薄暗い世界で、だれよりも
ひとりだったんだよ


わたしは、かみさま

ううん。
かみさまの、かわり




でも、なんでもできるよ


いろんな人のいろんな未来をしってる



いろんな人のいろんな過去もしってる

知りたくないこと、

見たくないこと、


ぜんぶ、ぜんぶ知っちゃったけど、
わたしのことは、だれも知らない。

わたしの声は、
こうやって届いたにしても

わたしの心は、
どうやっても届かない

……なんちゃって、

わたしは、かみさま。

……の、かわり。



ほら、そこにあるいてる人がいる。



わたしが、このボタンをおす


――きえる。

あたりまえのことだけどね。

かみさまなんだもん。

そういうものなんだよ

教室、中をのぞく

一人のおんなのこが、泣いている

理由は、この手からながれてくるの

だいじょうぶ、だよ

だから、

このボタンをおす

――けした。

きまぐれなことだけどね、

かみさまなんだもん。

「―――――!!!!」

なんでだろう

わたしは、たすけたと思ったのに
おこられた。


わたし、なんでだろうね。
おこられたよ

こんなのいつもだけどね
かみさまなんだから。

薄暗い世界で、だれよりも
自由だったんだよ

わたしだけが、
この世界につれていかれたんだよ

なんで、なんで、
こんな世界があるんだろう。

わたしは、
なんで、あの世界を、
みることしかできないんだろう。


わたしは、ずっとひとりで、

あの世界から
人を消すことしかしらないの。

だけどね、
わたしは、いる。

わたしがいるんだから、しかたないよ。

もう、いや

まってよ

おさかながしゃべった

きみに、ありがとうを言いに来た

わたしは、何もしてないよ

そんなことはないよ

そんなこと、ある

君が、消した大きな魚

――あれがいなくなって、
海は平和になったんだ

そんなの覚えてないよ

何か救ったことを、
自覚していることなんて
そうそうないよ

あの海の魚は、みんな、
きみにありがとうと言いたがってる

そんなの、たまたまだよ
きまぐれだよ

わたしは、
ただ、消しただけ。

消すことしか出来ない要らない子

それでもね、
きみが、きみをひどいと思っていても

ぼくらは、きみに
救われたんだ

ぼくらは、
きみが、だいすきなんだ

―――――っ、

そう、思っていいのかな…?

思ってもらわないと困るよ

だって、わたしっ、わたしはっ……!

――ありがとう

――――えっ、あ、あり、が、と……

きみが、何気なくしたことでも、

ぼくらにとっては
かけがえのないことなんだ

……っ、……ひ、ひっく……


わたしがいるから、
わたしが、きらいな人がいる。



そういうこと、そういうこと。
どうしようもないこと、







でもね、
わたしがいるから、
わたしが、たいせつな人もいる。



そういうこと、そういうこと。
どうしようもないこと、

どうしようもなく、

でもね、

どうしようもなく、
素敵なこと

どうしようもない話

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