ラフルッタさん 後編

公園デートの際は
ラフルッタさんが
自分のリクエストに応えて、

お弁当を作ってきてくれた
ことがあった。

フタを開けてみると

とりあえず
カラフルなパプリカと
ふやけ切った鰹節が
モリモリで、

麺がヨレヨレの焼うどんが
箱にぎゅうぎゅうに
詰め込まれていた。

ラフルッタ

どう美味しいですか?

ピッツァ

あ、うん。美味しいよ(パプリカだけは)

ラフルッタ

よかったです。料理はあまり得意な方がじゃないんで

ピッツァ

でしょうね

あともう一回お弁当を
作ってくれる機会があって、

それは麺が焼きそばに
変わっただけの
劣化版だったので、

それ以降はまたファミレスで
飯を食っていた気がする。

なんやかんや、

お互いに他に目ぼしい
異性もいなかったし、

何となくデートを重ねて、

自分もいい加減白黒つけないとなと
思って再度告白したところ

ラフルッタ

うーん。
せっかく好きになりかけてたのに、
前回のデートに時に言ってくれたら違ったんだけどなあ。

ラフルッタ

今日じゃないんだよなあ

ピッツァ

いまのくだり、ニヤけるところと違くない?

誤解無きように補足しておくと、

別にこれまでの会話は
出会い系メールとか貢いでる
キャバ嬢のつれない同伴とか
じゃなくて、

普通に一般人同士が
交際に至るまでの流れに
起きたリアルトークである。

さすがに女に飢えてた
自分でもその一言で
一気に醒めてしまい、

その日から彼女との連絡を絶った。

それから数日後の祝日の早朝、

たまたま近所のアパートで火事が起きた。

けっこう規模が大きくて
何個かのメディアにも
流れていたようで、

昼頃にケータイに目をやると
ラフルッタさんからの
着信履歴が無数にあった。

ラフルッタ

なんですぐに出てくれないんですか!ラジオで火事のこと聞いて、大丈夫かなって本当に心配したんですから!!

そのセリフだけ聞くと
胸キュンラブストーリーの再会を
予感させるものだが、

実際彼女のTシャツの胸に
描かれていたダサく黄ばんだ
×キ×ラのプリントを見て
それがデスストーリーの序章
である事に気づいた
時にはすでに遅く

ラフルッタ

ここ数日わざと私に連絡しませんでしたよね?駆け引きしたいのはわかるんですけど、もうそういうの止めましょうよ

僕は星に願いを、

胸に十字を切った。



そして例のごとく、

午前のファミレスでお説教が始まった。

結局、

ラフルッタさんとは
それ以降なんの発展もなく、


もちろん連絡も取っていない。

たしか最後に会ったのは
自分が整体業、

カイロプラクティック
の資格を取り、

新しく仕事を始めるときで

ラフルッタ

今日は開業祝なので私が出しますよ!

と言ってファミレスの
ハンバーグセットを
おごってくれて、

それがそのままラフルッタさんとの
最後の晩餐になった。

後日談として






ラフルッタさんが幹事の合コンに
マリナーラが呼ばれたらしく、
マリナーラ曰く

マリナーラ(くるみ)

ひどかった。信じられなかった。兄ちゃんの前でこんな話するのは申し訳ないけど、誰かに愚痴らないと気が済まない

ピッツァ

わかった。聞こう。何があった?

マリナーラ(くるみ)

自分の話ばっかりしてすごく段取り悪かったし、何より…男側の幹事がラフルッタさんの元カレだったという気まずさ

ピッツァ

え、マジで?

マリナーラ(くるみ)

ちなみに会が終わった後に、その男性と話す機会があって、ラフルッタさんとどうしてわかれたのか聞いてみるとひとこと

『彼女は狂ってるよ。あれ以上一緒にいると気が変になりそうだったから俺から別れた。まあ、彼女は俺がだらしないから私から別れを切り出したって言い散らかしてるらしいけど、とりあえずあいつと一緒の空間にいなくて済むのならもうどうだって良いんだ』

ピッツァ

ちょっとしたサイコスリラーじゃんか!!

ピッツァ

にしても彼もよくそんなラフルッタさんの合コンの誘いにオーケーしたね?普通無視しない?

マリナーラ(くるみ)

無視した方が後で大変だって思ったんでしょう。
何されるかわかんないし。

ピッツァ

OH~、I SEE.

マリナーラ(くるみ)

ちなみに半年ぐらい半同棲したけど、
元カレとの心的ストレスを理由に一回もHさせてくれなかったらしいよ?
ああ、何か次々に生々しい話して申し訳ないけれども

ピッツァ

マジか~。もしかしたら俺が厳しかったり横暴だったかなという罪悪感もちょっとあったけどいま完全に払拭できた。
礼を言うグラッチェ!

マリナーラ(くるみ)

何より、くるは昔からラフルッタさんは何かっちゃあお姉さん風吹かせる感じがうっとうしかった!!
一生許せない、ふんだ!!!

ピッツァ

え、今の話の締めがそこ?

おしまい

ラ フルッタさん 後編

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