こんな感情、知ってしまったら、
そこで終わりだと思っていた
こんな感情、知ってしまったら、
そこで終わりだと思っていた
それに、それ以上なんて求めていない
ただ尊敬できる人がそばにいて、
「おかえり」って言ってくれさえ
――ああ、悪いね、ちがう、
無理だけど叶うなら、
その手に触れたかった、
髪を撫でたかった、手を握りたかった
誰よりも、一番でいたかった
皆に平等な素振りさえしていれば、
まだ、近付きやすくなる
遠い人だから、仲良くなることすら、
ままならなくて、恥ずかしい話だね
毎日、眼で背を追ってしまう、
追い越したくなって、
その背が小さいことを知って、
それも、悪くないかなって
こんなこと、初めてだったから
忘れたくはなくて、
――、
そんな夢、本当に夢、
なのに、冷めない、夢
お前、チョコぐらいもらってやれ
先生すっごい困るんだからな…。
女子泣いてるのに、
授業とかできる訳ないだろ
なら、先生は、本命でもない人から
チョコレートもらって、嬉しい？
教育指導教員への嫌味か…。
すっげー嬉しい、けど、断ざるをえない
お前は断らなくても良いのに、
全員断ったよな…？
あはは、先生が、羨ましいですか
俺を、羨ましいと、
当たり前だろーが、オイ
お前のチョコ隊に
俺の好きな子いたんだぞ！？
――え？
あ、いや、つい、
なら、そのチョコだけもらって
来年から先生にあげましょうか
お、おおおま、お前、人の
好意を踏みにじりやがって…！
――そんなことしたら、
お前と、その子が進展するだろうが
……いや、別にそれも良いけど
先生と生徒の恋なんて、
成就しないのに
わりと本気だった先生かわいー
いっちいちうっぜぇな！？
若さなんざ気合でどうにか出来んだよ！？
俺はな、こう見えても、
先生カッコイイって
言われる方なんだぞ！？
可愛いとか馬鹿なこと言うのは
お前ぐらいだ
俺だけ？
そうだよ、お前だけだ
だから、俺はお前が
思ってるより凄い
もっと先生を敬え、
跪け、ついでに命乞いをしろ
先生、たまに頭悪いこと言うよね
聞いてんのか、このチョコ野郎！！
チョコ、もらってませんけど？
揚げ足ばっか捕んじゃねェよ
しばきたくなるから帰れ
じゃあ、最後にひとつだけ
………
先生、僕は本命から欲しい
馬鹿を言え
――意味、わかりますか？
何ドヤ顔してんだよ
分かんねぇよ
帰れ
ああいう風に、ゲームのように
人の感情を知ってか、知らずか、
こっちは、本当に、
――本当に、……って、違う
彼には普通の幸せがある。
たくさんの人に愛される人だ
――それなのに、そんな、人を、
一時の馬鹿げた、本当に、馬鹿げた
すぐ捨ててしまえ、る、ような感情で
その全部のしあわせを壊してしまうのなら、
それは、俺の幸福には、けしてならない
やめてくれ、こんな感情は、人を壊す、
だから、これは夢だ
現実には、こんな感情を持ってはいけない
だから、この夢は醒めない
