放課後になっても、桐子はそこにいた。ぼーっとしていて上を向いている。
潤はそっと静かに近づいた。

野川 詩音

私と桐子と瑞希は、互いに好きって言い合って気持ちを伝えようと約束をしていました。

仲良くなってからしばらく経ったある日のこと、瑞希が詩音と桐子にそれぞれ企画を持ち出したのだ。
桐子と詩音は互いに相手がその約束をしていたことを知らなかった。

野川 詩音

瑞希がまさか桐子にも話をしていたなんて知らなかった。桐子と私の架け橋だったなんて知らなかった。

その約束の日は、桐子の誕生日だった。瑞希は桐子の感謝を伝えたいと企画を立てたという。詩音も桐子と仲良くなったのは瑞希のおかげて、桐子に対しても感謝したいことがあったのだ。

野川 詩音

桐子は、責任強い人だから…。瑞希が死んだのも自分のせいだって思っているのかもしれない。

少しずつ彼女に近づいていく。
何を考えているのかわからないくらいの無表情で、無口な彼女。
一緒にいてもどこか遠くを感じる不思議な彼女に潤は近づく。

先輩…

きーちゃんに気付かれてしまった。驚いて俺を見ている。彼女の目が少し赤く涙の跡が見えた。

よかった…。きーちゃん

ぎゅっと抱きしめて、きーちゃんの無事を確かめる。ちゃんといた。きーちゃんは自分を追い詰めて、身を投げ出すなんてしなかった。
きーちゃんは驚いてじたばたしたが、段々と落ち着いてきた。

先輩…

きーちゃんがいなくなりそうで、怖かった

……

彼女を解放して隣に座る。
きーちゃんがいなくなったらと思うと怖くなって、抱きしめてしまったことを先に詫びた。

私は、先輩に抱きしめられるほどいい人じゃないですよ。大切な約束を破ってしまったひどい人です

友達の約束なんだよね?

ええ…。私は瑞希にありがとうって言えなかったんです。臆病な私に声をかけてくれて、仲良くしてくれてありがとうって伝えたかったのに…できなかった。

しーちゃんが後からやってきた。きーちゃんの前にやってきて、そして俺と同じようにきーちゃんをぎゅっと抱きしめる。

野川 詩音

桐子、ずっとごめんね。あんたのせいなんかじゃないよ。私だって瑞希から計画を聞いていたの

詩音も?本当?

野川 詩音

私も知っていたんだ。瑞希の気持ちも桐子の気持ちも、だけど、桐子があの約束を果たせなかったことに責任を感じていたなんて知らなくて…ごめん

しーちゃんときーちゃんの二人が殺人鬼を探す理由は友達の復讐のため、しかし、そのニュアンス、思い入れには相違があった。
一人は友達に対する後悔から、もう一人は犯人に対する許さないという気持ちから。
きーちゃんの心に気付かなかったら、二人は崩壊していただろう。

先輩、詩音。今日はごめんね。

ごめんは、受け取ったから十分だよ

野川 詩音

こういう時はありがとうってものよ

そしてきーちゃんの口から二人の殺人鬼探し活動に協力してほしいと頼まれた。
俺は承る。二人の力になるために、そして二人が幸せになるために防衛隊の隊長として動こう。

生きてほしい、何があっても

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