「女のクセに」
「オカルト研究の発表会じゃないんだよ」
「死者の転生など、我々の研究を批判するつもりか」

自分を罵倒する教授達。
自分の人生を振り返ればすべてが裏目になった気がする。

最初は誰かを助けたい、無念の死を遂げた人間を救いたかった。

道半ば病気にかかり、癌の研究をあきらめざるを得なかった父親を見た時からだった。

でも自分に正々堂々、人と向き合う強さなんて無かった。

私の精神は父親を見た瞬間の少女から成長していなかった。

殺人鬼を甦らせて復讐をしてやろうと思ったが、その短絡的な考えは自分をより人から遠い場所に置くだけだった。

そういった反省は終わりの瞬間にしかできないことが悔しかった。

まぁ、悪い子供の末路なんてこんなものかね

体に炎の熱が伝わってくるのを感じ、真冬は目を閉じた。

あれは

火の中をくぐって倒れる真冬を見つけた宮本。

おい!

なに

誰かわからない声がして目を開ける。

君は警察か、死にたくないなら私を置いて早く出て行きな

悪いですけど仕事ですから。それにあなたには聞きたいことが山ほどあるので署まで御同行ください。

この状況でお決まりの科白をいえるなんてさすが刑事さん。

煙を多く吸ったせいで激しく咳き込む真冬。

まずい、早くつかまれ

私はここで終わりたいんだ。最後くらいは我儘を聞いてくれないか。

邪魔するなら公務執行妨害で逮捕しますよ。

しょうが・・ないか

それだけを最後に真冬は意識を手放した。

煙を吸いすぎたか、仕方ない

真冬を背負い脱出口を目指す宮本。

歩き出そうとしたとき彼女のそばにあるファイルを見つけた。

運がいいのは取り柄なのかどうなのか。この借りはキッチリ返してもらいますからね佐々木さん。

家の前、高柳は彼の体である薫の自宅前に来ていた。

ここに来た理由は一つ。最後の休息をとるため、ただそれだけだった。

今日はもう疲れた。眠ろう

そう家に近づくと見覚えのある顔があった。

なんだ君か、今日はもうお腹いっぱいなんだ。帰ってくれないかな

あなたは誰なんですか。

あの後私は考えました。貴方は杉本君じゃないんじゃないかって

そうだよ、彼は俺に体を喰われた。いい機会だから自己紹介代わりに教えてあげるよ俺が何者なのかを。

そうですか、なら猶更です。彼に体を返してください。

するわけないじゃん。これから楽しむのに。
こんな夜中に女の子一人で君は何も反省しないんだね

お願いです。返してください彼を。

聞こえますか杉本君。貴方が私を助けてくれたのは本当です。貴方はそんな得体のしれない怪物なんかじゃないです。あなたは私のヒーロー、杉本薫君です。

告白だか何だかわからないけど、うるさいなぁ。ちょっとイライラしてきた。しょうがない・・死んでよ

ヒッ

ビクリと体を震わせる菜月の首に手を伸ばす高柳。

「弱い者いじめなんてお前らしくないじゃないか、高柳君」

聞き覚えのある声に手を止める。

やっと見つけたよ。

刑事さんも相変わらずしつこいね。俺はあの時とは違う。あんたにだって負けたりしないさ

勝つとか負けるとか、あの時より随分小物臭くなったじゃないの

どうかな

取り出したナイフで佐々木を狙う高柳。

残念!

高柳の予想に反して佐々木はあっさりと決着をつけてしまった。

ナイフを持つ手をとらえられ簡単に組み伏せられてしまう高柳。

ドカッとコンクリートの地面に体をたたきつける音が響く。

「嘘だ。ありえない、こんなあっさりとした結末であってたまるか」

「俺はこれから楽しむんだ。まだまだ俺を押さえつけたやつらに仕返しするんだ。こんなあっさり終わってたまるか」

一気に余裕をなくし高柳は子供のように喚き散らす。

「この体は杉本の体なんだ。そんな乱暴にしていいのか」

その通りホントなら一発殴ってやりたいところだよ。
でも俺にできることは法に乗っ取ってお前を裁く。それが直哉の仇だ。それが俺にできる復讐だ

「クソ、なんでだどいつもこいつも俺を否定して」

当たり前だ。他人を否定しているやつを受け入れる人間なんていない

「叫ぶように泣き叫ぶ高柳」

そしてその佐々木の言葉に呼応するように

「そろそろ返してくれるかい、もう充分だろ」

お前まで俺を否定するか・・

それが高柳が残した最後の言葉だった。

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