これで、しばらく撒けたね…。

――落ち着いた?

甘藤杏子

落ち着いたも何も、
如月はどうなるの?

死なないとは思うけど、
負けるよね。

甘藤杏子

なら、どうして?

これは、酷い頼みだと思うけど

もし、如月が死んでたら

――甘藤、忌術って使えるよね?

甘藤杏子

…甦生…?

そう。
君の身体が蝕まれないように、
我が加力するから――

甘藤杏子

………それは、そう、だけど…。

分かっている。
その時になったら、考えて

甘藤杏子

これは――
誰かの為に取っときたかったのに

それって、あべくんのこと?

甘藤杏子

……あべ………くん…?

聞き覚えのある声だなって
思ってたら、
君自身もいたんだ?

そうだよ!
元気だぞー!

……うん
何もなかったことにするよ

呪ってやる

甘藤杏子

え?この子達と知り合いなの?

――――――――

お初に御目に掛かります

――橋姫と申す者なり☆

よし、帰れ

――御指名とあらば、現れんとなぁ…

檻田

察しましたが、
お名前をお伺いしても?

妾は、輪燈 眼々
――この陀牛の、飼い主よ

それと、

振りかざされる白刃、
空を裂く残音が反響す

反射的に身を引き、
状況を確認する

檻田

……憂叉?

憂叉

――――――主、これは……
血が……っ、贄が……

憂叉

―――っ、―――――……

憂叉

俺は、――

そこの常世王の飼い主でもある

檻田

とにかく、
憂叉を所有物扱いするの
止めてくれる?

憂叉は、憂叉のだから

檻田

で。
憂叉、何やってんの

憂叉

主、退いて
頂けないでしょうか

俺は、和国の神を
殺したいのです

檻田

無理

憂叉

退け

檻田

無理

――のぅ、犍陀多。

目の前には、
お前を喰らおうとする
常世王がおる

そして、
それを妨げる輩がおる

――分かるかえ?

犍陀多

………そう、だな…。

まだ、迷っているのかえ?
牛は羊じゃああるまいし

檻田

また従う気かい?

犍陀多

…………っ、

妾に救われた身じゃろう?

そして、妾に飼われ、
捨てられれば地獄に戻る身

檻田

地獄に……戻る…?

元々地獄から連れてきたんよ。

一度きりの機会を、
自己中心的考えで
逃してしまった
哀れで愚かな盗人――

まだ、陀牛は
自分が何よりも可愛いんよ

絶対服従なんは
仕方あるまい?

檻田

その言い方、
眼々様は、まるで――

憂叉

余所見は関心しませんが

檻田

どちらかと言うと、
君が他所だからね。

――眼々様、俺は……

ほーんに、仕方がないのぅ…?

少々、時間をくれてやろう。
犍陀多、少し、帰ろうか

檻田

それで君は本当に良いのかい?

犍陀多

悪ぃのは、分かってる。
だが、時間をくれないか…。

檻田

分かった

君が答えを選べるまで、
待つよ

では、また――

檻田

……憂、叉…、

憂叉

―――何故、そのような怪我を

憂叉

―――!?

檻田

これ……呪術施されてる傷だよ……

檻田

治療は…甘藤にお願い…してもらって…

ためいきと、ためらい

お気に入り(16)
facebook twitter
pagetop