エンヤァ~~~~!!!!

やれやれ、久しいな、娘

……やっぱり、あの時の神様だったんだ

こうして我と繋がってる間だけは生前の記憶も我の存在も、輪廻の部屋の存在も感知できる。よく覚えていたな

この人生を送れるために転生させてくれて、それは感謝してる。でも、いくらなんでもひどすぎじゃない?

何がだ

あなたから連絡が来たときは本当に驚いた。でも、それ以上に夫と、娘まで亡くなったって聞いた時は心臓が止まるかと思った

自然の暴力は我々の管轄ではない。故にと言うのも癪だが、輪廻の部屋にもバグが起きた

彼が、亘と娘達が死んだ原因が自然災害とでも言うのですか!

そのとおりだ

……あの砂時計は、そこまで読んでいたのですか?こんな急な死に反応できていないのでは

何を言う。以前の貴様の死も事故で合ったではないか。寿命は我の管轄ではない以上砂時計の砂の分配も知り得たものではない

だが、先程も言ったがあまりに大勢の人間が一度に死んでしまった。輪廻の部屋はすべての人間と同じ数だけ存在するわけではない。一度に大量の訪問があれば、フリーズしてしまう

フリーズ、ですか。それでは、その死んでいった人の『清算』は……

ああ、未完のままだ。部屋も万能ではない。今は順番に意識をこちらに引っ張って生産を行っているが、いつ終わるかは分からん。そちらとこちらでは時間の流れが違う

だが、清算するまで放置するわけにもいかない。あまりに未練が強い死魂は霊魂となって無為に生前の世界に留まろうとする。それでは部屋が存在する意味がなくなる。故に、まずは死んだ魂を『預ける』ための世界が必要だった

……それが、私が転生したこの世界だった

偶然ではあるがな。生産も終わっていない以上、魂の年齢もリセットされずに死んだ時期の年齢にほぼつりあうように上下している。お前が生前の夫にすぐ『会えた』のはそのためだ

では、娘はこの国の姫様として転生しました。それは何故ですか?私は山奥にいたから存じませんが、彼女が転生する前から姫という存在はあったのでは?

簡単だ。そんな存在はいなかった。王や周囲の者たちの記憶を少しいじったまでのことだ

……なぜそこまでなさるのです?

帳尻を合わせただけだ

帳尻、ですか。娘と婚約者を近くに置き、そして夫が私にすぐに会えるような場所に転生した。これも帳尻合わせの結果ですか?

……偶然が重なったのだろう

……ええ、きっとそうですよね

あと最後に、清算が終わった魂はどうなるのです?また新しい世界に転生するのですか?

今回はミスや予期せぬ事態が重なった結果だ。故に、転生したいかどうかは本人の意思に任せている

……輪廻ってそんなに融通利くものなんですか?

人間も似たようなことをするだろう?一応全員転生しているのだし、それくらいの融通は不可能ではない。清算は全員強制だがな

転生が強制ではない……それを聞いて安心しました

貴様はしっかり清算を終えて20年前に転生しているからな。もし伴侶が転生を望めば、ついていくことは出来まいぞ?

構いませんよ。こうやってもう一度会えただけで十分な奇跡といえますし、きっと彼は……亘は転生を望みません

神様、強い想いは輪廻をも超えるんです。私は、それを強く感じました

否定してやりたいが、貴様を見てるとその気力も失せるな

つくづく縁のある女よ。言えた義理ではないが祈っておいてやろう。少しでもその幸せが続くことをな

……ありがとう

やれやれ、我も随分と変わってしまったな

袋小路 ある番人の慈悲

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