ミヤコ

……はっ!

 意識が戻ると図書館にいた。

 暗い。窓の外は闇につつまれている。夜なのだろうか?

リーズン

ようやく起きましたわね。ミヤコ。

ミヤコ

あらリーズンさん。朝ご飯はまだ?

リーズン

そんなん食ってる場合じゃないでしょうが!

 何をカリカリ怒っているのだろうか? そういえば、私は何をしていたのだろう? 今日は散歩の日だっけ?

ミヤコ

暗い図書館ね。文化会館の司書さんを呼んで、明かりをつけてもらいましょう。

リーズン

もぉう。ミヤコォ。ミヤコォォォォ。お願いだからしっかりしますのよぉ。

  リーズンは泣きそうな声を出して肩をゆする。

  季節性鬱かしら?

魔物

うごおおおおおおおおおおおおっ!!!!

 すごい雄叫びがした。ビリビリと図書館が揺れる。

リーズン

きましたわ! 静かにするのよ!

ミヤコ

本当にね! 誰かしら、図書館は静かにしないと。

リーズン

図書館じゃありませんわよ。書庫。塔に閉じこもっている間、時間つぶしのために、作った書庫なのですわ。

 本棚が倒された。本が宙を飛び、窓を突き破る。闇ではなく塔の壁が広がっていた。

リーズン

ひっひい!!

魔物

うごあああああああああああああああっ!

 また雄叫びがあがる。

ミヤコ

何を興奮しているのかしら? あっ!

 ミヤコが魔物に気づいた。

リーズン

おわかりになって? さあ、隠れてやりすごし……。

ミヤコ

あの子ったら!

 ミヤコが本棚の影から飛び出し、魔物にツカツカと向かっていった。

リーズン

まさかミヤコ。戦おうというの?

 なんと勇気がある行為だろう。さすが魔法剣士。

 リーズンは感心する。

ミヤコ

こらっ、ポチ! 物を壊すのはいけませんっ!

リーズン

ミヤコォ!?

 ポチ!? ポチってどなた!?

ミヤコ

家でおとなしくお留守番してなさいって言ったでしょ! この子ったら!

リーズン

ここあなたの家じゃありませんわよ!!

 ミヤコは何かと勘違いしている。ボケている。絶対犬か何かだと思っている。

ミヤコ

誰が毎日水槽をきれいにしていると思ってるの!

リーズン

ポチって金魚なの!? ミヤコ!!

魔物

うごがあああああああああああああああっ!!

 魔物がミヤコに襲いかかってきた。

 やられる!

ミヤコ

ていっ!!

魔物

うごおっ!?

 ミヤコは両手をあげて、魔物の肩めがけてチョップ。ひ弱な女の子のチョップだと油断した魔物は、床を突き破って奈落に落ちていく。肩の骨が砕けたのか、鈍い音がした。

リーズン

あっあれは、モンゴリアンチョップ!?

 モンゴリアンチョップとは、とある日本人があまりにもモンゴル人に似ており、友人にからかわれたとき、「俺は日本人だ!!」と平手でチョップしツッコんだことから始まった、ミヤコ二十八手の1つである。

 リーズンは、これをやられて肩のこりを治した。

リーズン

やったわねミヤコ!! 魔物を倒したわ!! さすが魔法剣士!!

ミヤコ

きゃあ、どうしましょう!? 床を壊してしまったわ! みんなの税金が……。

リーズン

そんなのどうでもよくってよ。あっ。

マーズン

おのれ、姉。

 リーズンが床にあいた穴をのぞくと、小さな女の子が倒れている。プルプルと体を震わせていた。両腕がピンとのびている。肩をやられた証拠である。

 魔物の姿は消えていた。

リーズン

マーズン!? 

ミヤコ

マークン!? 小学生時代、給食のコッペパンを机に隠していてカビらせた!?

リーズン

誰ですのそれ! マーズン! 私の妹ですわ。下に降りましょう。

ミヤコ

待ってください。

リーズン

どうしましたの?

ミヤコ

腰やっちゃいました。おぶって。

リーズン

ミィヤァゴォォォォォォォォォ!!

 とか言ってましたが、リーズンさんはおぶってくれました。

 優しい人です。

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