――そこで、悪代官は――

如月氷芳

Zzzz…

檻田

聞き覚えのある話してるけど
何でこの話しているの?

犍陀多

聞き覚えのあるというより、なぁ?

憂叉

――――――

檻田

……憂叉?

犍陀多

――なぁ、

檻田

何?

犍陀多

あの書物
何にも書いてなくねぇか?

言われてみれば…

檻田

――何かに、介入されてる?

犍陀多

バレねぇように
細工しようと思ってんのに
お前らが強引に
俺を幽閉すりゃあな?

犍陀多

こういう常世者の使い方は、
俺の主人

輪燈 眼々様のやり方だ

檻田

――輪燈 眼々?
神様にしては変な名前だね

犍陀多

元々常世者みたいなモンらしいしな

それに神と言っても、
この世界の摂理を管理するだけだ

檻田

憂叉、
さっきから文句の一つも
言わないけど

憂叉

―――――

犍陀多

噂をすれば

檻田

何が起こっているんだい?

犍陀多

天命が下っているんじゃねぇのか

犍陀多

神に従い、
英雄に殺される為に
作られてるのが常世者

――特に常世王

犍陀多

よく耐えてるとは思うが

そろそろ、
衝動が収まらなくなって
和国の神を
喰いたくなってくる

檻田

あのさぁ、

檻田

何流暢にしてんのさ、
和国の神

犍陀多

おう、俺だな

檻田

喰われるのでも
待つつもりかい!?

檻田

借りるよ

憂叉

――――――


常世王、
もう限界が近いであろう?

……………何の御用件ですか

不完全な神を喰らい、
完全な贄となれ

英雄に食われる為の、存在と化せ、

従えません

何度も言いますが
――俺の、主は一人です

何をしても、常世王は神を喰らう
そして、英雄に殺される


常世王の血は、全てを癒す


全ての犠牲に、
全ての命にお前は、為る――

――っ、確かに、それは……

――叉、憂叉!!!

憂叉

はっ……

憂叉

どうか、致しましたか?

檻田

いきなり、
上の空にならないでくれない?

檻田

……なんて

犍陀多から聞いたよ

憂叉

はい
しかし、大した事では御座いません

檻田

大した事だよ

檻田

今日は、
もう何も考えない方がいい

檻田

犍陀多、
僕は諦める奴は嫌いだ

犍陀多

無謀な事をする馬鹿を蔑んでた奴が
何を言うかと思えばな

檻田

元はお前のお陰で
こんな無謀になったんだよ

檻田

お前の主が、
酷い結末を要求するなら
何年経っても、
何回転生しても
君は永遠に逃れられないよ

犍陀多

消えるはずが、
拾われた命だ

俺は眼々様の道具でしかねぇよ

檻田

なら、巻き込むな

少なくとも、憂叉は、
神のものじゃない

どちらかと言うと、
僕のであり、
何より、憂叉自身のだ


紫蝶は話を読み終え、
一呼吸吐く

紫蝶

――めでたし、めでたし

もう終わり?

紫蝶

本当は、
まだ、あるとは思うのだけれど…

――春日神のこと、
分かると思ったんだけどな

甘藤杏子

良く分からないけど、
ざまあみろ

紫蝶

お役に立てなかったのかしら…

甘藤杏子

とんでも御座いません。
皆さま、とても喜んでらっしゃいますわ

面白かったー!!!

面白かったー!!!

面白かったー!!!

面白かったー!!!

甘藤杏子

ほら――

お姉ちゃんは
面白くなかったー!!

甘藤杏子

……。

帰蝶さん

紫蝶

はい、何でしょうか

この際、単刀直入に聞くけど

春日神、
何処にやったか分かる?

紫蝶

それが、
春日神ではないのでしょうか?

これ?

何にも入ってないよ
これには

紫蝶

――――そう、ですか…

如月氷芳

どういう、こと…だ…?

甘藤杏子

やっぱり、わん様は、
何か隠してるじゃない!!

隠してないとは言ってないからね

甘藤杏子

なんで早くそういう事は
言わないの?

言ってもどうしようも
ないだろう?

甘藤杏子

そういう事じゃないって
言ってるんだけど?

如月氷芳

――それは、いつ気付いたんだ

わりとすぐって言ったら、
怒るよねー?

如月氷芳

怒る気も失せる

どうせ、常世国に
連れて行かれた思って

遠征に行かせても
見つからなかったし

如月氷芳

その為の遠征だったのか?

――――――

無論、
討伐も含めてだ

王は歪に笑う

その表情には、
悲しさと憎しみしか籠っていない

それを悟った天藤も、
笑みを引き攣らせて
怒りを、わざとらしく見せつける

甘藤杏子

常世者嫌いなの、
そろそろ治したら?

元々仕えていた神が
常世者に喰われてるのに
恨むなと?

常世王は殺す

とにかく、
昔の主を食べて、
春日神を食べようとする
常世王を見付けて壊す

甘藤杏子

私は誰であっても
救うつもりだからね?

誰もかれも許すのは、
ただ自分が
認められたいからだろう?

甘藤杏子

そういうところ、触れる?

刹那、落下する氷

それは、会話を裂くように
二人の中央に落ちる

如月氷芳

その話は、
お互いやめると
言っていなかったか?

甘藤杏子

曲げる気はないけど
引くことはできるから

振り回しているし、
自分勝手なのは
申し訳ないと思ってる

けど

我が一番大事なのは、
取り敢えず、君達

今の行動は全部
君達の為と思って
している事だ

――それだけは、信じてほしい

甘藤杏子

聞きました、如月?
とりあえず、ですってー?

如月氷芳

肝心なところで、
口下手だからな…?

ちょ、ちょっと待って、
そういう意味じゃないっ!

甘藤杏子

そんなこと、分かってる

如月氷芳

王にどれだけ仕えてきたと
思ってるんだ…?

何だろう、少し驚いてる
信頼されてないと思ってた

甘藤杏子

昇給♪

如月氷芳

休日

するとでも?

甘藤杏子

とりあえず、
その私たちの為とか言う
変な偽善思考から治そうか?

如月氷芳

お前もはっきり言い過ぎだ

影忘れ、誰彼を探す

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