花瓶にさされた一輪の花、

それの影は、淡紅色に伸び、
青年の姿を映す

影は、徐徐に色を纏い、
壁へと伝い、実体へと変わる

対になるように、
花瓶の色彩が薄れ、影の様になり、
机へと沈んでいく

犍陀多

………あー

――のも、束の間、花瓶はまた色を帯び、
青年は影へと戻る

犍陀多

これ、何回繰り返すんだ?

青年――犍陀多は、
不機嫌そうに、少しだけ困惑の色を
混ぜた表情で尋ねる

憂叉

人の形に保ちたいのですが
慣れておらず、申し訳ございません。

檻田

面倒臭くなったら、
ずっと桜に戻していいよ

憂叉

しかし、そうしてしまうと

檻田

桜の場合、これ、見れるの?

憂叉

今は子どもと
戯れてるだけですので、
見なくても良いかと

犍陀多

――芦屋、吉良、王
帰蝶もいるか…

犍陀多

じゃねぇよ!

壊して、拉致って、拘束して、
そっからの台詞がそれか?

檻田

拘束じゃなくて、幽閉

憂叉

やり方が荒々しくて、
申し訳ございません

犍陀多

常世討伐の英雄が、
神攫いの大罪人とはなぁ?

檻田

この常世国においては、
昔の僕らこそ大罪人だ

檻田

まさか自分が壊滅させた
国の王になっていて、

それを復興させる
……とは思わなかったけど

犍陀多

常世王?お前が?

檻田

僕、高貴な身にしか
生まれないから♪

憂叉

本当は、
俺が常世王ですがね

檻田

なんですぐバラすかなぁ…?

犍陀多

…に、しては立場変わらなそうだが

憂叉

勝手に、
役人試験に突破して、

勝手に、
側近に成り上がり、

勝手に、
人脈広げて、
彼に逆らえる者など少ないので

実質、常世王なのは彼方かと

檻田

でも、弁える所は弁えてるよ

檻田

憂叉に命令されたら、
それなりに従う

憂叉

恭しくて気持ち悪いので、
止めて戴きたい所存でございます

犍陀多

あー、どっちでもいい

犍陀多

で、常世王様は、
俺をどうしたいんだ?

檻田

此処、
禁煙だから止めてくれない?

犍陀多

最近の常世国、住み辛くなったな

檻田

聞こえないフリかい?

客人だから、特別に許すけどね

憂叉

――あ、上がりました

檻田

なんで
勝手に上がってる?

犍陀多

呑気だな…?

掘ったら出てきた
「とらんぷ」って昔の遊びだよ!

憂叉

戦略もなしに
革命ばかりする貴方に非があるかと

檻田

革命楽しいから、革命した

檻田

革命するのが
楽しい遊戯だよね、これ

犍陀多

何でもいいが、
質問に答えろ

檻田

いいよ。
お前は――

あがりました!!

檻田

なら、これで!!

今、革命中ですよ?

檻田

……あ

憂叉

少し、良いですか

犍陀多

おう、

憂叉

今の状況、
貴方にとってそこまで悪くはありません。
ある意味、最悪ですが

犍陀多

意味深に言うな、どっちだ

憂叉

どのように伝えるかは、
主が決めることです

憂叉

しかし、ですね

憂叉

貴方が思っているより、


――主は、単純で、愚直で、馬鹿で

檻田

そこで、黒の札だよね?

な、何ですか!?
それ!?

檻田

常世王勅命により、
この遊戯、
僕の勝利とする!!

最低ですね!!

もう遊んであげませんよ!?

檻田

あ、それは困る

檻田

でも、黒の札の力は絶対だから

憂叉

負けず嫌いで、諦め嫌いです

しかも、
それを他者にも要求するのが
厄介な所です

犍陀多

他者に?

憂叉

主と、
そして、俺も、ですが
貴方の――そうですね、

憂叉

一言でいえば、
貴方の死に様が、
嫌いが為に
幽閉いたしました

犍陀多

いや、良く分からねぇ
…………とも、言えねぇか

そこで、「とらんぷ」だよ!

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