ミヤコ

とりあえず、異世界に呼んだ理由を教えてくれない?

リーズン

あっ、そうですわね。実は今大変なことになってますのよ。

ミヤコ

あらあら。何かご病気? それとも癌?

リーズン

そうそう。年を取ったら病気が多くなりますのよねぇ。って、そっちじゃなくて。冬が終わらないのよ。

 冬が終わらない? どういうことだろう?

リーズン

実は妹が塔に閉じこもっちゃってねぇ。《季節》の引き継ぎをしたんだけど、まだ早かったですわ。

ミヤコ

はあ。結局どうすれば?

リーズン

妹を塔から出してほしいの。そうすれば、春の女王が塔に入れますわ。身内の問題は身内で解決するのが決まりですの。

ミヤコ

はあ……。

リーズン

やる気ないわね。

 そりゃそうだ。どうして私が他人の問題を解決しなければならないのか。早く元の世界に戻ってお料理の準備をしなければならないのに。異世界に呼ばれた理由がマヌケすぎる。

ミヤコ

わかりました。妹さんを塔から出しましょう。お手伝いしますよ。

 ここは協力しておいたほうがいい。この人は融通がきかないから、問題を解決するまで帰してくれないだろう。孫たちに会うためだ。

リーズン

えっ? 本当ですの? 昔のあなたなら、『どうして他人の問題を私が解決しなきゃならないのよ!』って逆ギレして、チョークスリーパーをかましていたのに。

ミヤコ

もっもう! そんなことはいいから! 早く塔に連れて行ってください!

 リーズンを急かして、塔に向かって歩き始めた。

 塔は1時間ほどで到着した。

 歩きながらリーズンが、異世界がどうなったか話し続けていた。耳にまったく入っていなかった。そもそもわからないし、興味がないし、孫に会いたいしで頭がごちゃごちゃしていた。

リーズン

到着しましたわよ。

ミヤコ

えっ?

リーズン

人の話ちゃんと聞いてましたの?

ミヤコ

年を取ると高音域が聞こえにくくて。

リーズン

私の声は電子音じゃなくってよ!

 耳が良くなってる。若さがうらやましいと、改めて思った。

 胸もたれてないし。重いけど。

ミヤコ

この塔に妹さんがいるのですね。入り口はあそこの扉ですか?

リーズン

そうよ。

ミヤコ

扉を開けられないとか?

リーズン

がっつり鍵がかかってますわ。

ミヤコ

ふぅん……。

 扉は頑丈そうだ。体当たりしても無駄だろう。鍵を見つけて開けるしかなさそうだ。

リーズン

鍵がどこにあるかわからないのよ。困ったわぁ。

ミヤコ

……あっ、もしかして。

 扉の近くにある植木鉢に近づく。花が咲いていたようだが、枯れてしまっていた。持ち上げて下を見ると、思い通りの物があった。

ミヤコ

見つけましたよ。鍵。

リーズン

……なっ、なんですって!? なぜそこに鍵があるとわかりましたの!?

ミヤコ

私もよくやるんですよ。家を出たときに鍵をなくしちゃうと入れないですからね。ボケちゃってきてますから。

リーズン

さすが魔法剣士ミヤコね。私の魔法では見つけられませんでしたわ。

ミヤコ

魔法じゃありませんよ。次から塔の管理会社に頼んで予備の鍵を作ってもらいましょう。

リーズン

わかりました。鍵屋さんに行って、予備の鍵を作ってもらいますわ。って、そんなものないですわよ!

 ないんですね。鍵屋。

 鍵を使って扉を開けた。

 塔のなかは閑散としていた。隙間から風が吹き荒れている。悲鳴のような音が響いてくる。

リーズン

やっと塔のなかに入れましたわ。さっ、妹を探しますわよ。

ミヤコ

あれ?

 違和感がした。扉をじっと見つめる。老眼だったからついめがねを探すしぐさをしてしまったが、若くなっているので視力の調整がうまくいってる。

 白内障だったので手術を受けたのに。治療費を返してもらいたいと思った。

リーズン

ミヤコ、何してますの?

ミヤコ

えっ? あっ、はいはい。妹さんを探すのね。

 名前を呼ばれたショックで記憶が飛んでしまった。何をしたかったのか思い出せない。そういえば、今日の朝は何を食べたのだろうか?

リーズン

妹はこの塔の最上階にいると思いますわ。さあ、階段を上りましょう。

 リーズンはさっさと階段に向かっていた。

 階段を上りきる。

 疲れてしまった。体力温存のため休憩が必要だ。

 この調子だと、まだまだ先は長いだろう。

ミヤコ

ふう。やれやれ。どっこいしょ。

 イスがないから窓辺に座った。ガラス窓がないから外の外気が直接肌にふれる。火照った体には気持ちよかった。

ミヤコ

だいぶ上ったわね。リーズンさん。ちょっと休憩しましょ。

リーズン

まだ2階よミヤコ!

 若い人はせっかちでいけません。

pagetop