甘藤杏子

昔、昔あるところにー

少女は、語り聞かせる。

良く慣れ親しんだ
この国に伝わる英雄の話だ

――が、

昔っていつー?

甘藤杏子

昔は昔

どれぐらいー?

甘藤杏子

知る訳ないでしょう

あるところって何処ー?

甘藤杏子

あるところは、アルトコロっていう村なのよ

火を見るよりも、明らか
火事が起こるよりも、異常
とでも言うべきか

子ども達が、
皆して仮面をつけている

しかし、少女も異常であることを
知ってか知らずか、話し続ける

嘘吐いたー

嘘吐いたー

嘘吐いたー

甘藤杏子

――聞きたいの?
聞きたくないの?

ねぇ、どっち?


子どもの扱いが至ってなっていない為
からかわれてばかりだが

お姉ちゃん、馬鹿なの?

甘藤杏子

ん?

だって、何にも分からないもん

甘藤杏子

お姉さんに、聞こえる様に、
もう一回、言って、御覧なさい?

お姉ちゃ――

急いで来てみたけど、
なにこれ、ひどい!!!

一寸違ってたら、拗れてたね♪

甘藤杏子

何よ、わんさ……

――――

甘藤杏子

―――――

いつも通りの声色で、
彼を叱咤しようとしたが、

美しい女性の姿に見惚れ
言葉を詰まらせる

そして、声色を上げて
よそ行きの鈴を転がすような声を作る

甘藤杏子

よくぞ、いらっしゃいました。

貴方のお名前、
聞いてもよろしいですか?

初めまして。紫蝶と申します。
寺子屋で、読み書きを教えておりました

甘藤杏子

はい、良しなに

甘藤杏子

――大きい

あ、そういうの気にするんだ?

甘藤杏子

別に。
思っただけだから

如月氷芳

……甘藤、仕事をするなと

甘藤杏子

神様に祈ってない巫女はー、仕事じゃありませんー

如月氷芳

何故、こんな怪しい子供たちに、
昔話など語っているんだ?

甘藤杏子

怪しい?普通じゃない
自分の手を見ていいなさい?

――変だな

甘藤杏子

それであの子たちを見てみなさい

如月氷芳

――いや、

如月氷芳

―――――

如月氷芳

明らかに、
常世者だろう!?

甘藤杏子

え、常世って

甘藤杏子

こういう、可愛い生物がいるって…

如月氷芳

言ったが、
それが全部ではないからな!?

言うけど、それ
可愛くないよね?

おさかなさん、かわいいもん、かわいいもん…!!!

甘藤杏子

ほら!!
貴方が酷いこと言うから、
泣いちゃったじゃない!!

如月氷芳

何故、そこで泣いた

悪いが、
それは可愛くない

受け入れろ

お前、末代まで呪ってやる

上等だ
かかってこい

お前、末代まで呪ってやる

お前、末代まで呪ってやる

お前、末代まで呪ってやる

お前、末代まで呪ってやる

一度使ってみたかったんだ
誰が使った言葉か忘れたけど

如月氷芳

大人げないな

可愛いと思ったのか、お前は

如月氷芳

本当の事でも言っていいことと、
悪いことが――

お前も祝ってやる

如月氷芳

しまった…

生まれた日に、
贈り物を届けてやる

生まれた日に、
贈り物を届けてやる

生まれた日に、
贈り物を届けてやる

如月氷芳

……祝ってないか?

末代まで祝ってやる

末代まで祝ってやる

末代まで祝ってやる

如月氷芳

末代までとは、有り難いな

如月氷芳

常世者だが無害だろう

甘藤杏子

まあ、生意気だけど可愛いしね

!!!!

かわいい!!

如月氷芳

機嫌治ったな

早いね

如月氷芳

子供は良く分からないな
常世者のようだ

実際、常世者であろう?

それにしても
この子どもの相手を
紫蝶さんに
お願いしようと
思ったのにな

だーれかさんが

「わあああああ!!常世者だ!!」

とか叫ばなければよかったのになー

それぐらい、引き受けますわ

――――おや、

嬉しいなー♪

ぜひお願いするよー

昔は昔なの。それ以上突っ込まないで

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