麗花――に転生したというその男は、持っていた本を近くのゴミ箱に投げ捨てた。
転……生…
あぁ。…そんな驚くことないだろう?君だってどうせ転生してその身になったのだろうから
麗花――に転生したというその男は、持っていた本を近くのゴミ箱に投げ捨てた。
あぁ!!
思わず悲鳴が出てしまった。
おかげで軽蔑するような視線を向けられた。
君を見てると同じ男として恥ずかしいよ
…うっせ。
…あのさ、お前も転生したってんならその……
あぁ。死んだよ。元の僕はね
………
なんだそんな顔をして…君だって死んだから、こうして女子小学生に転生したんじゃないか
そうだけど…
なぁ、せっかくこうして転生した者同士出会えたんだ。――僕ら、手を組まないか?
……は?
気にならないか?どうして僕らは転生したのか――小学四年生に転生したのか
……
普通転生っていったら、また新たに一から生まれ育つものじゃないのか?
そうだな…だと思う
ほかに転生なんてしたことないが、転生の意味として強いのはそれだろう。そもそも転生があるなんて思ってやいなかった。
――死の後があるのさえも思っていなかったわけだし。
さらに僕の身体である『城ヶ崎麗花』――家や学校の様子を見る限り、一人の人として存在していたみたいだしな
……だな。この『大内桜子』も……
だから、僕らで協力して真相を確かめないか?
真相を…?
――なぜ僕らは女子小学生に転生したのか、そして『大内桜子』と『城ヶ崎麗花』の行方は?
そんなの分かるのか?
それに行方なんて…俺らがこうしている以上、彼女たちは……
分からないぞ。まだどこかにいるのかもしれない。それに……
麗花(正確にはもう麗花ではないのだが、そう表記させてもらう)は公園で駆け回り遊ぶ子供たちを愛おしく見つめながら言う。
――僕は彼女たちにちゃんと生きて欲しい。
……だな
大人の俺たちが、なんとかして二人を元に戻さねぇとな
俺と麗花は頷き合って、麗花が右手を差し出してきた。
お互い、生前の名は言わなくていいだろう。もう死んで使うこともないのだし。今は彼女らの名を借りることにしよう
改めてよろしくな、桜子。
俺は差し出された手を握り返す。
――よろしく、麗花。
十七時を知らせる鐘が鳴った。
小学生は帰る時間だ。