ひとり、はらりと落ちる

あたたかな土の中に響く、
さくらが散る音

その散った人を、私は知っている

彼は私たちの監視役として、
ずっと近くにいたから


悔いある選択を
なんども巡っていて、
出口が見えなくなってる迷い人

それがたまらなく、
わたしの後悔に似ていて、

微笑みそうな程、憎く感じてしまう

消えていく人の想いでを
残すことが出来ないわたしの記憶から、

また、遠くなっていく

大切な人達のそばにいたいから、
その人たちを犠牲にしてしまう後悔が、

きっと君の中で、ぐるぐると絡まっていく

でも、わたしは忘れるし、
君は弱いから、きっと、ずっと、遠くなる

また来世、また来世、そうやって、ずっと、

綺麗な、空だね

綺麗な花の間違いだろう?

ん?

私、この花嫌いなの

ああ、桜は
春日神の象徴だったか

この和国の神様になったばかりの
春日神――通称、かすがのかす様

ざっくり言うと、桜の神様
仕事しない系の神様


願いを叶えてはくれるけど、


それはお気に入りの、
ほんの一握りにだけの話

だから、その一握りに
たくさんの人が頼ってくる

頼られるのは、嬉しいけど、
これは元々、神様の仕事

だから、わたし達、
ほんの一握りの「優遇者」は、

神様に呆れたり、憤りを感じている

そう!

かす様を思い出すから、桜は嫌い

かす様、本当に働かない

神事が不正常過ぎて、困る

王様(わんさま)も
吠えてばっかになるし

確かに、春日神様に仕えてから
終始不機嫌だな

お陰様で、
文官の仕事もさせられるぞ?

全部、かす様が仕事しないのが悪いのー

……ああいう神様、嫌いじゃないがな

仕事に関係なければな?

そうそう、
その調子で嫌いになってって!

餞別として、
茶菓子をあげようー♪

そこの、綺麗なお姉さん!!
今日一番の和菓子を、彼に!!!

そこの綺麗なお姉さん

はーい♪
高く付くよー!!

え?

なんで、
今日一番が、
桜なの?

食べ物に罪はない…

そういうことじゃない

頂きます

もういい

頂くがよい

神様なのに、不公平なのって何様なの?

さぁな

神様なの?

紛れもなく、神様だな…

そういうところで
空気読めないよね

というか、美味しそうですねー

どう言い返しても
文句言うだろう?

和菓子は、塩分が足りない

もういい

食べるの禁止
金もお前が払うがよろし

今さらな話だが、
春日神に愛されている癖に、嫌うのか

貴方も、
愛されてる数人の一人なのに

武人として
有能な駒だと思われたからだろう

なんで私たちにだけにしか
優しくないのかな、あの神様

悪党でさえ
抱きかかえてくれる神を
私は待っている

ずっと、待ってるの

それは、神に意思がなく、
大衆に漂い続けろ…とでも言いたいのか?

口論は嫌いだから、
ここまでにしてほしいな?

……悪かった

ただ、間違えてくれるな

僕も、あの神を嫌いではないだけだ

しかし、
今から御挨拶に行く

時を考えてよ

――この傷、分からないのか?

ううーん

呪術は流石に神頼みだねー?

それと、ひとつの戦で
ひとつは呪術引き受けてくるよね?

春日神になってから、
完治させていただける自負があるからな

なに?

呪い引き受けてるの?

僕に移せば、死人が減る

効率が良いだろう…♪

それ、
馬鹿って言うのよ

不公平な神に愛された者たち

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