音が、した。

懐かしい、旧友が鈴の音、

役目を果たした自分の身体も、
大分、薄くなってきた

自分は、もうすぐ灰になる。

そういうと、彼らは、了承してくれた

此方で、余生は迎えないのですか

飽くまでも、お前らとつるんでた事、
それは仕事だ

そう淡白に言われると、困りますね

お前らも、嫌いじゃあねぇけどな

「けして、常世国で、死んではならなぬ」

そう命令されてしまったからには、

またこの国へ帰ってくるだろうが


奴らの墓参りは、
死んでからじゃ遅いんだよ

今でも気を抜くと
奴らの最後ばっかり思い出してしまう。

長い時間、
奴らとバカみたいな日々を
過ごしてきたはずだったんだが。

素敵な、空だね

奇術師の芦屋の、馬鹿みたいな口癖だ

死ぬ前も、火の粉に手を伸ばして嬉しそうに
俺に微笑みながら、眼を閉じた

――分かってるよ、と唇を動かした時は
心臓を抉られる気分になった

裏切っていたのが、
お前だったとはな…?

王と、経費だ、仕事だと騒ぐ吉良
常世随一と謳われる強さは計り知れず、

卑怯な手を使って殺してしまった

口ではあれほど言っておきながらも

「この命は、王の為だ」と、
英雄を二人も道連れにする忠誠心が、
今でも俺を苦しめている

何れにせよ、
我は廃る常世王

否、お前に殺られるとは
滑稽な事よ

聡いお前は、いつから気付いていたのか。

それでも、あえて気付かないフリをして
死ぬ間際まで、俺を嫌う素振りで殺された王

だが、最後に忌々しく呟いた台詞が、
酒と煙草の銘柄な辺り、

どちらが騙されているのか分からない

お前の好きな銘柄だ

届いてるか?

どうせ、地獄にいんだろ?
熱くはないか?


声なんてするわけない
それでいい













奴らは化け物と呼ばれる常世者
しかし、奴らにも死はある

それを誰かに知らしめたくなった
そう、例えば、この世界の神とか

俺ァ、
お前らを裏切って此処にいる

だから、
ずっと此処にいさせて
くれないか?

独り言を、空しく語り続ける。


それが妙に腹立たしくて、
虚しさで罪を償えた気がして、
堪らなく、止められない

例え、俺が死んで、
生まれ変わっても、
此処にいる

来世なんてモノがあるなら
――そうだな、

この、桜の樹として
ぼーぜんと、何もせずに立ってたいね

俺は、何も出来ない姿で、

どっしり構えてっから

酒呑みが集まる
煩い場所にしてくれよ?

無様に本音でも言うとな

俺ァ、
アイツら
英雄様様より

お前らと
死にたかった

……まあ、
次があれば、よろしく頼むわ

何に応えるでもなく雨が降る

それが、妙に空しくて、冷たくて、
だからこそ、不器用な温かみを感じる

もうそろ、帰らないと、
俺も灰になっちまいそうだ

忠犬が死んで、その灰を
枯れ木に撒けば桜になった。

そんな話もあったが、
俺は、裏切り者で、忠犬とは程遠い

それに、輪廻から外されかかっている身だ。

もうそろ、神の遣いなんて終業だ
来世なんぞ、あるのかも分かりゃしねぇ

桜供養(2/15加筆)

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