はい、その通りです

僕の物語を完結させなければ、エルカは元の場所には戻ることができません

エルカ

だったら、事前に教えてくれれば良いのに………本を探してってしか、言われてなかったよ

エルカ

本を開いたら、こんな場所にいるから……驚いたよ

……すみません

エルカ

……………

深々と頭を下げる王子をこれ以上は責められなかった。



知っていても、知らなくても、私はここに来なければならなかったのだ。










「彼」は私が描いた物語の主人公。


私たちが探していた本は彼が主人公の物語。




 ———それが、この世界










過ぎてしまった出来事に何を言っても無意味。
それぐらいは承知している。





エルカ

過ぎたことだし、もう良いよ

ありがとうございます

エルカ

ところで、貴方のことは何と呼べば良いの?

プリン王子様!

エルカ

変な名前

変じゃありません!

エルカ

王子でいいね

王子

それで、何奴ですか?

私に責められる立場から一変、攻撃的な視線をナイトに向ける。

対するナイトの表情は変わらない。それが余計に王子を苛々させるのだろう。

ナイト

オレはナイト。探し物があって、ここにお邪魔しているんだよ

エルカ

何を探しているの?

ナイト

オレを手伝うつもりかい?
待て待て待て………そんな手間はかけさせたくないんだよ

エルカ

でも、何だか悪い気がする

私は既に彼に助けられているから……彼の助けになりたいという思いもあった。

ナイト

その気持ちで十分だよ。エルカは自分優先にしてくれて良いから。

王子

ああああああ!! 探し物を早く回収して立ち去ってください

ナイト

出来れば良いのだけどな。
エルカの手伝いをしてやるよ。そっちの事情に気付いてしまった以上は、オレも放っておけないからね

王子

ええええ?

エルカ

じゃあ、私もナイトの探し物を

ナイト

そんな余裕はないだろ?
それに、これはオレの目的の為でもあるんだ

ナイト

おそらく、この物語が動かなければ意味がない。
オレの探しているものも見つからないと思う。だから、これはオレの目的の為に必要なことだ

エルカ

ありがとう。助かるわ

ナイト

困っているときはお互い様だろ?

エルカ

そうだよね。だから、ナイトの探しものも手伝うから、何かあったら言ってね。あまり役に立たないけど。

ナイト

ああ 頼りにしているよ

エルカ

お互い様だよ

王子

こんな得体の知れない男の協力は不要ですよ

エルカ

得体の知れないのは全員同じだと思うけど。
王子には何か出来るの? 
まぁ力仕事ぐらいはできるよね……

王子

はぁぁ? 
王子が力仕事なんてする必要あるのですか? 
物語の登場人物は余計な知識もありませんし、余計な腕力もありません

エルカ

お、男の子だよね、力仕事ぐらいは出来るって言うべきだよ

王子

………

エルカ

……役立たず

王子

!!

第2章 物語りのハジマリ3

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