16.思い出す

 …今見せられているのは…一体何…?
 私は…私は…

 ”涙”じゃなく…”雫”…?

霧雨 涙

…え?

 私は…霧の中にいた。
 さっきまで過去を見せられていた…はずなのに。

 霧の向こうから誰かがこちらへ近づいてきた。

霧雨 雫(涙)

初めまして、”未来の私”…。

霧雨 涙

…!!

 私の前に現れたのは…”幼き頃の私”だった。

霧雨 雫(涙)

私は未来でも上手く”涙”を演じられている?

霧雨 涙

…。

霧雨 雫(涙)

…ああ、まだ思い出せないんだね。

霧雨 雫(涙)

本当は”自分は涙じゃなくて雫”だということが。

霧雨 涙

…そんなの…そんなの…!!

 ”嘘だ”という言葉を口に出せなかった。
 あの見せられた光景は作られた幻覚だと信じたかった。
 だって、ほっぺを抓っても痛くなかったから。
 …けれど、私はすべてを思い出してしまった。

霧雨 涙

…私が…”涙を殺したんだ”。

霧雨 雫(涙)

それは違う…。

霧雨 雫(涙)

”未来の私”も見たでしょ…?
”樋爪 豊”が”涙を殺したのを”…。

霧雨 涙

ゆ…たか…。

霧雨 涙

…。

 私は牢屋の中にいた。
 そう…豊と帰宅途中からの記憶がない。
 また、ほっぺを抓った。
 …痛い。
 どうやら、現実に戻ってきたようだ。

霧雨 涙

…私が…終わらせるよ。

霧雨 涙

”涙”♪

 ー続く

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