『――何処にいても変わらない。』

その言葉は、
ゴーストが信じている全てを
否定する言葉だ。

それなのに、
一瞬だけ、言葉に動かされそうになる。

これだけ、彼女を信じているのに。

――彼女が、自身の呪いを
  解くことなど訪れない


そんな言葉に、手を引かれそうになる

だから、言葉を壊したかった
――それなのに、

……いやだ

また、友人が、傷つくのは、いやだ

俺の世界を壊して、俺を連れ出した少女が
いきなり感情的に泣き出した

彼女は、自由の象徴だ


歩くだけで人を殺す呪いに抗い、
自由になろうと足掻いている

それなのに、これでは、まるで、
何もできない少女のようだ

俺が、信じた自由は、
こんなに弱く、脆いものだったのか?

少し、幻滅させられそうになる

違う、幻滅だなんておこがましい。



彼女に「自由」や「しあわせ」の象徴を
求め過ぎていたのかもしれない。

―――――!!

俺の世界を壊して、
新しい世界へ連れ出した彼女に


信仰心に近い憧れを
勝手に抱いてしまったんだ

それぐらい、不自然で、奇跡だったんだ





俺の、今の日常は
人と話せるという行為は
「普通」という行為自体が


本末転倒なのは、
分かっていても、


それ以降の彼女との未来が、
その少女を救うことで搔き消されたとしても

――何処でも変わらない。

その言葉の意味は、

彼女が
生きてはいけない
場所しかない

そんなこと、決して、思いたくなかった

盗むは、花より毒の蜂⑩

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