体育で無実表明をしても結局いじめには、なんの効果もなかった。
変化があったとすれば、暴力系が男子の担当。ねちねち系は女子の担当。とはっきり分かれたことくらいだった。
暴力系は、階段から突き落とされたり(悠美はよくあたしに落とされてるらしい)、後ろから殴られたり、叩かれたり、蹴られたり(悠美は全部あたしからされてるらしい)。
ねちねち系は陰口を言ったり(悠美はあたしに陰で悪口を入れているらしい)と、明確に分けられてきたことだ。
これたぶん誰から主導している。
でもそれは悠美ではない気がする。
この間の体育の一件から、悠美の尻尾をつかむのが困難であることが分かった。
あんな、いじめをしている友人を止める演出としても、悪意が飛び交う中走って出ていける人間がいるだろうか。
あたしはなかなかできないと思う。
だからこそ、あれをやった時点で、悠美はあたしをいじめたいのではなく、いじめをとめたい、だけど友人がエスカレートしていて困っている。
みたいな印象を持たれたんじゃないか。
そう思っている。
そんな悠美に対して、あたしは何も言えない。
悠美は言ってしまえば何もしていないのだ。
人心を誘導しているわけでもない。
ただ、最初の一回だけ、悠美自身が自分に嘘をついた。
考えてみれば、悠美はあたしに対しても、取り巻きに対しても嘘をついたことはない。
悠美が嘘をつくときは、自分に対してだけで、それを糾弾できる人間なんてここにはいなのだ。
なんてことを思ったきっかけは、そう、今の状況。
クラスのみんなの提出物が集まらないこの状況。困った。